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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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56話 教育システムの構築

帝国歴224年8月 シューネヴァルト辺境伯政庁 リヒト・フォン・シューネヴァルト

 産業育成も重要だが、内政では教育が最も重要だ。やはり国が拠って立つところは人材だと思う。

 アダムズ護民官に相談したら「教育は国家百年の計ですから良いことだと思います」と賛成してくれた。

 軍備に産業育成、まちづくりなど資金が必要なことは山積みで予算は足りないが、教育費は最優先で確保するようにしている。

 今年に入ってから建物の建築など本格的に準備を進め、何とか9月にいくつかの学校を開校する準備ができた。

 学校は、まず基本的な文字と計算を学ぶ基礎学校(グリュントシューレ)(略称:GS)に通ってもらう。

 GSは民族も種族も問わず、領内の子どもは誰でも無料で通えるようにした。

 獣人には文字の読めない文盲も少なくなかったので、学校で文字を教えることはグウィン殿もコトルリ殿も喜んでくれた。

 学校をつくるのは領民の教育水準の向上のほかに、一緒の教室に通うことで異種族への偏見をなくしたいという思いもある。

 僕もレーナも同級生に獣人がいたから、獣人への偏見がいかに根拠のないものか実感できていた。

 GSは6歳から11歳までの5年間を基本とするが、最初はこれまでに学ぶ機会のなかった年長の子どもや大人も通えるようにした。

 優秀な子どもがいれば飛び級もさせる。

 GSを卒業すると、家庭の事情などですぐに働く必要がある場合は仕方ないが、なるべく進学することを推奨することにしている。

 進学先は三つ用意した。

 最も多くの者が進学するのは各種の職人になるための技術を学ぶ技術学校(テヒノロギーシューレ)(略称:TS)だ。

 TSでは領内で必要とされる職人を養成するために、ドワーフから購入する鉱石を製錬する職人と、製錬した鉄を扱う鍛冶師を優先して育成する。

 このほかにパン屋やビール職人、料理人なども育成する。講師はそれぞれの分野で職人として働いて引退した老人に依頼した。ときどきは現役の職人にも教壇に立ってもらう。

 二つ目の進学先は士官学校だ。本人が希望し、体力などの適性検査に合格した者に入学してもらう。

 士官学校では本物の武器を使った演習があるので、危険もある。このため授業料が無料なだけではなく、給料も出すことにした。

 なおGSの卒業時には全員の精霊魔法への適性も調べることにした。

 適性のある者はシューネヴァルト辺境伯家の家臣に採用して、仕官学校ではなく樹海の中で鬼人族の指導を受けてもらうことにしている。

 三つ目の進学先として、GSで成績が優秀だった者がより専門的に法律(ゲゼッツ)経済(ヴィルツシャフト)などを学ぶための大学(ウニベルジテート)を設立した。

 野盗のふりをして攻め込んできた貴族たちから謝金という名の身代金を得たことは、大学を建てる予算の確保につながった。

 GSとTSは集会場や私塾など既存の建物を利用したが、大学は新しく建てた。

 ただし、シューネヴァルト領には高度な専門知識のある人が足りないので、教師の派遣を皇女殿下に依頼した。

 話をつないでくれたレーナによると、皇女殿下は「私への最初の依頼はお金でも兵力でもなく教師ですか。人材育成を最優先しているということでしょうか。シューネヴァルト辺境伯は興味深いですわ」とおっしゃったそうだ。

 人材は国の礎だから教育は重要だ。優秀な学者を集めて質の高い教育を行えば、領内の人材が育つし、他の地域から優秀な学生も集まると思う。

 大学の初代学長は、シューネヴァルトに押しかけて来た歴史家のクラインに就任してもらった。

 彼女はまだ若いが、帝都でも名を知られた学者なので適任だと思うが、本人は驚いたようだ。

 政庁に呼んで話をしたとき、こんなやり取りをした。

 「辺境伯閣下、お呼びでしょうか。」

 「ああ、クライン。呼び出してすまない。実はシューネヴァルトに大学を設立する準備を進めているんだ。教師は帝都から派遣してもらうが、学長を君に頼みたい。」

 「私が学長ですか?帝都では歴史の研究ばかりしていて、学校の運営は経験がないのですが。」

 「細かい実務は事務局長にやってもらうから、経験がなくても大丈夫だ。」

 「そうですか。これまで自由にさせて頂いたので、できるだけ協力させて頂きます。歴史を観察するだけではなく、歴史をつくる側に参加するのも貴重な経験だと思います。」

学長まで皇女殿下からの借り物ではさすがに格好悪いので、クラインがシューネヴァルト家に仕えてくれていて良かったと思う。

 シューネヴァルト大学は入試に受かれば、貴族でも平民でも亜人でも獣人でも入学できることにした。

 どんな人材が育ってくれるか、将来が楽しみだ。


………

 「リヒトが辺境伯となって行った統治の特徴として、教育の重視が挙げられる。人材こそが国の力であるという信念のもと、予算が乏しくとも教育に資金を投入し、基本的な教育を行う基礎学校(グリュントシューレ)は無料とした。これまで帝国には領民に無料で教育を行う貴族はいなかった。

シューネヴァルトでは領内で育成したい産業で必要な人材を養成する職業教育に力が入れられ、領内の経済力強化につながっていった。

 高等教育については、今では大陸有数の知の拠点として有名なシューネヴァルト大学が設立された。初代学長は恥ずかしながら筆者が務めた。このため、設立当時のシューネヴァルト大学については客観的に評価できないため、他の歴史家の評価に委ねたい。」

  エスター・クライン著「リヒト戦記」より



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