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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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40話 舞踏会と決闘?

帝国歴223年9月 シューネヴァルト辺境伯政庁 レヒト・フォン・シューネヴァルト


 「今度、帝国西部の貴族が集まる舞踏会が開かれるんだけど、アルも参加するよね。」

 ある日、突然レーナが舞踏会の話をしてきた。

 「えっ、舞踏会。いや、聞いてないけど。」

 トリーア卿に確認したところ、確かに舞踏会の招待状が届いていた。辺境伯領の立ち上げでバタバタしていて、つい後回しになってしまっていたようだ。トリーア卿は失態だと自分を責めていたが、人手不足だし、あまり気にしないでほしい。

 場所は帝国西部の貴族を束ねる立場にあるペリグー公爵領だ。

 ペリグー公爵は前の皇帝の弟であり、現皇帝の叔父にあたる。既に高齢で政治的な野心はなく、その関心は専ら文化や芸術に向けられているらしい。

 舞踏会に行くと、新しい辺境伯として僕は良くも悪くも注目を集めるだろう。

 皇女派の貴族は好意的に迎えてくれるとしても、皇子派の貴族からは悪口を言われたり、嫌がらせを受けるかもしれない。帝国西部は皇子派のほうが勢力は強い。

 正直に言えば気が重いが、行かないわけにもいかない。

 同行者はレーナとメールス卿のほかに、今回は妹も来る。それから、嫌な思いをするかもしれないと伝えたのだが、狼人族のグウィネスも付いて来た。

 何でも、獣人族を迫害する帝国がどんな奴らか見てこいと父親のグウィン殿に言われたらしい。本人も見聞を広めたいと言っていた。


ペリグー公爵邸大ホール リヒト・フォン・シューネヴァルト

 公爵の館は帝都の王宮ほどではないが、瀟洒な建物だった。

 舞踏会はその大ホールで行われる。

 妹は普段よりも華やかな化粧をして、レースのふんだんに使われたドレスを着ている。「これが今日の戦闘服だよ」と言っていたが、何と戦うんだろう。

 ダンスが始まる前に、そこかしこで貴族たちが談笑している。

 レーナに紹介してもらって皇女派の貴族たちと挨拶をした。中でもシューネヴァルトに隣接する領地を有するアーレン子爵は、広大な牧場を所有していて良馬を産するので、仲良くなりたいと思っていた。

 アーレン子爵は周囲には皇子派が多いので歓迎すると言ってくれた。

 その後は中小貴族たちが寄って来た。たいていの者が娘や妹を伴っていて、僕に紹介しようと群がってくる。

 エルナは僕にぴったりと寄り添い、自分の可憐な容貌を見せつけるようにしている。笑顔を浮かべているが、何だか威嚇しているような気もする。

 そのうちに、田舎者とか帝国に負けたくせになどの陰口が聞こえてきた。予想していたので笑顔で聞き流す。

 「お若いのにシューネヴァルト辺境伯閣下は大人の対応をされていますね。私なら切れています。」

 声をかけてきたのはアーレン子爵だった。

 大人の対応なのかな。学校では陰口を言われることも多かったから、いちいち気にしないようにするスキルが身に付いただけなんだが。

 そのとき、貴族のお付きの者が控えている会場の端のほうで大きな音がした。あれはグウィネスのいるあたりだ。


ペリグー公爵邸大ホール グウィネス

 獣人である私が帝国貴族の舞踏会にいることは異様なのだろう。周囲からひそひそ声が聞こえる。

 父からは「獣人を蔑む帝国貴族どもの顔を見てこい」と言われてきた。会場の端から見ていると、あちらこちらで談笑する貴族たちは高価そうな服を着ているが、優秀そうな者は少ない。

 まあこんなものかと思っていると、一人の酔っぱらった貴族が近寄って来た。

 「おや、こんなところに獣人が紛れ込んでいるな。お前はどんな立場でここにいる。」

 事前に辺境伯閣下から警告されていたが、やはり絡んで来る者がいたか。

 「私はシューネヴァルト辺境伯領で隊長を仰せつかっている者です。」

 「ほう、シューネヴァルト辺境伯領はよほどの人手不足と見える。獣人が隊長などとは聞いたことがない。」

 貴族は顔を歪めた。

 「ほう、獣人にしては整った顔ではないか。どうせ辺境伯に色仕掛けでもしたのだろう。辺境伯はとんだ変態だな。

 そういえば、しっぽはどんな風に体に付いているんだ。前から気になっておったのだ。ちょっと見せてみろ。」

 貴族は私の体に手をかけようとしてきた。ここまで帝国貴族が愚劣とは、予想をはるかに下回るな。

 貴族になるべく怪我をさせないように身を捩ってかわしたところ、近くの台に置かれていた食器が大きな音を立てながら床に落ちた。

 しまったと思っていたら、猛然とこちらに駆けてくる姿が目に入った。あれは辺境伯閣下だ。

 「グウィネス、何があった?」

 「申し訳ありません、閣下。近くの食器を置いてある台に当たってしまいました。」

 私のことで閣下に迷惑をかけたくなくて、咄嗟にそう説明した。

 だが私の近くにいたもう一人の連隊長であるグラットバッハ殿が怒りに燃えた顔で閣下に状況を説明した。

 すると、閣下はまだ近くにいた酔っ払いの貴族に近づいていき、手袋を外して投げつけた。

 「カミン伯爵、私の家臣を不当に侮辱し、あまつさえ服に手をかけようとするとは許しがたい。決闘を申し込む。」



冒頭に年月を入れたり、既に投稿したものを含めて少し修正しました。

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