幕間 レーナとリヒトの両親
キャラクターの素顔が見えるような話にしたいと思って書きました。ストーリーには直結しませんので読み飛ばしてもらって構いませんが、キャラクターに興味を持ってくださっている方は読んでみてください。
グリューネヴァルトにレーナが来てからしばらく経ったある日、妹とレーナと一緒に午後のティータイムを過ごした。
帝国騎士団分隊司令部は辺境伯政庁の隣に設置されたので、最近は結構顔を会わせている。
「そういえば、ご両親はご健在なのか。」
昔話をしているとレーナが聞いてきた。
「ああ、お陰様で二人とも元気だよ。ただ、僕の育ての親として目立ちたくないらしくて、以前と同じように職人街で暮らしてるよ。」
「そうか。辺境伯の育ての親と広く知られると、有象無象が寄ってきそうではあるな。」
「まあねえ。自分が王子とか貴族とか、今でも実感はないんだけどね。」
辺境伯になってからというもの、遠い親戚と称する人や怪しげな商人がやって来て鬱陶しい。
「そういうものさ。アルにも貴族の苦労が分かってきたじゃないか。」
ふふんとレーナは笑った。
「何だか不本意だな。でも考えてみれば、レーナはグリューネヴァルトに戻ってきてから、父さんと母さんに会ってないよね。一度会いに行くかい?」
「えっ、アルのご両親に会うのか?」
レーナは紅茶の茶碗をガシャンと音を立てて置いた。
貴族らしからぬマナー違反だな。食事のときやお茶を飲むとき、できるだけ音を立てないのが大陸ではマナーの基本だ。
学校に通っていた頃に何度か両親に会っているはずだけど、なぜかレーナは固まっている。
僕が不思議そうな顔をしていると、
「やれやれ、兄さんは相変わらず女心を分かってないよね。」
と、なぜか妹が呆れている。不本意だ。
数日後、僕は空色の帽子を被った白いワンピースの美少女と職人街を歩いていた。
軍服から私服に着替えるとレーナは雰囲気ががらっと変わるので、何となく調子が狂う。
「どうしたんだい、アル。落ち着かないみたいだな。」
「いや、何だかレーナが普段と違う雰囲気だから。」
「ああ、この服か。似合わないかな。」
「いや、良く似合ってるよ。お嬢様みたいだ。って、本当にお嬢様なんだから、当たり前なんだろうけど。」
「そうか、似合ってるか、ふふん。」
レーナは機嫌が良くなった。
しばらく歩いて、両親の家に着いた。
「ここだよ。」
「本当に昔のままだな。懐かしいよ。」
扉をノックすると、母さんが出てきた。
「おや、アルかい。よく来たね。忙しいんじゃないのかい。」
「うん、まあ忙しいけど、時間はつくるものだからね。」
「アルも言うようになったねえ。ところで隣の綺麗なお嬢さんはどなたかい?」
「ああ、母さんはマルレーナ・ボーメのことは覚えているかい?」
「アルが仲良くしてた子かい。覚えてるよ、男の子みたいな子だったねえ。
えっ、もしかしてこのお嬢さんがレーナちゃんなのかい?」
「ご無沙汰しております。おば様。」
「まあまあ、すっかり見違えたよ。綺麗になったねえ。どうぞお入り。散らかってて申し訳ないけど。」
レーナと僕は居間に入り、母さんの出してくれたお茶を飲みながら話した。
少し昔話をした後で、レーナが実はノルトライン伯爵の娘だったと話したら母さんは驚いていたけど、「まあアルだって実は王子だったからねえ」と妙に納得してくれた。
その後、母さんが工房にいた父さんも呼んできて、四人で話をした。
レーナはなぜかいつもより大人しかったけど、笑顔だったので退屈とかいうわけじゃないんだろう。
思えばいろいろあったけど、こうして穏やかな時間が持てることは嬉しいものだ。




