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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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27話 それぞれの決意

 翌日、再び旧王宮に集まった解放軍の主要メンバーに、僕は自分が責任をとると伝えた。

 旧王国の王子が旗頭になったから人が集まったと帝国も考えているだろう。僕が帝国に捕まれば、彼らも安心するだろう。

 「狼人族と狐人族には逆戻りするようで済まないが、樹海の里に戻ってほしい。王国の旧臣の皆は、これまで以上に帝国の風当たりが強くなるかもしれないが、蜂起する前の仕事に戻って生活してほしい。」

 「何をおっしゃるのです。責任なら殿下を担ぎ出した私にある。殿下に責任をとらせる訳には参りません。」

 トリーア卿が血相を変えた。

 「私がまだ子どもの王子を傀儡(かいらい)として立てて、王国の再興を図るために領主軍に蜂起した。その筋立てのほうが自然でしょう。事実上の指導者は私だと名乗り出れば、彼らも納得すると思います。殿下は森の精霊アルセイドと契約しておられる。人族であっても樹海で暮らせるのですから、獣人の皆さんとお逃げください。」

 「いや、トリーア卿だけを犠牲にするのもご免被る。我ら狼人族は義を重んじる。先代の国王をみすみす死なせたことは我が氏族の恥だと思うておる。このうえ敵が強大だからと、理不尽に攻めてくる相手から逃げることはできぬ。済まぬが、我らの子どもや老人たちを狐人族に託させてくれ。大人の狼人族は最後まで戦おうぞ。」

 狼人族のグウィン族長が気色ばんでいうと、狐人族の族長であるコトルリ殿が口をひらいた。

 「済まんなあ。あんさんらの子どもや老人たちを預かることはできひん。」

 狼人族の族長がむっとした表情を見せたが、狐人族の族長の次の言葉は意外なものだった。

 「今回は狐人族も一緒に戦わせてもらうわ。うちらを狩って売ったのが領主やなくて領民だなんて嘘をつく連中は許せへん。狐人族もいつも銭だけで動くわけやない。こないに人族と獣人族が仲良くできる土地はないんや。勝てんから言うて、裏切ったり逃げたりせんところを見せなあかん。せやからうちらの子どもと老人らも狼人族さんとこと一緒に鬼人族に託させてくれへんかな。」

 いつもクールなコトルリ殿らしくない言葉だが、胸に響く。

 「やれやれ、みんな物好きだね。負ける戦にそんなに参加したいとはね。」

 鬼人族の族長であるカヤ殿だけは冷静なようだ。

 「狼人族と狐人族のお子さんや年寄りたちを樹海の奥の鬼人族の里で預かるのは了解した。帝国の連中が入り込むことはできない場所で子どもたちが育つまで匿おう。」

 そこでカヤ殿はかっと目を見開いた。

 「だが、コトルリ殿の言うとおりだ。こんなふうに獣人も亜人も人族も平等で一緒に働ける国はない。我らは遥か東の地から流れ流れてここに着いた。親や祖父母の代からいろんな国をさすらってきたが、我らが居場所を見いだせたのはこのシューネヴァルト王国しかなかった。我ら鬼人族も一緒に戦わせてもらう。」

 ああ、鬼人族も冷静なわけじゃなかった。

 「なに、むざむざやられはせん。帝国騎士団に負けない武具は作ったつもりだ。それに帝国軍の切り札は古代魔法師なんだろう。鬼人族には火の精霊魔法師がいる。魔法は古代魔法だけではないところを見せてやろう。」

 精霊魔法には古代魔法のような直接敵を攻撃する魔法はあまりない。たとえば僕がアルセイドと契約したことで少しずつ覚えている木の魔法は補助的な魔法が中心だ。だが火の精霊魔法には攻撃的な魔法もあるようだ。帝国騎士団の魔法師に多少でも対抗できるなら有難い。

 最後にメールス卿が旧臣たちを代表して発言した。

 「狼人族、狐人族、そして鬼人族の方々には感謝するしかありません。今回の蜂起は我らシューネヴァルト王国の臣下が起こしたもの。国の再興だけが目的ではなく民のためと思ってのことではありますが、それでも皆さんがここまで我らと共に戦う意思を固めてくださったのは望外の喜びです。」

 卿は僕のほうを見て語気を強めた。

 「殿下、我らシューネヴァルト王国の臣は、最後の一兵まで降伏などしません。先王陛下が帝国に騙し討たれた際、我ら王国軍はまともに抵抗できませんでした。今回はその屈辱を晴らします。

そして我が身に代えても、殿下はお守り致します。もし負け戦となりましたら、どうか鬼人族の里までお逃げください。」

 みんなの気持ちは嬉しい。涙が出そうだ。

 だが、もし帝国の騎士団に抵抗できるとしても、正面から戦えば味方に大きな犠牲が出る。この善良な人たちを死なせたくない。だからみんなに冷静になるよう呼びかけようと思ったところ、旧王宮の外が騒がしくなった。

 会議を一時中断して、何が起きたのか見に行った。

 旧王宮の玄関に出てみると、領民たちが不揃いの武器を持って集まっている。

 領民たちの先頭にいたグリューネブルク市長がこちらに気付いて口を開いた。

 「おお、殿下。聞きましたぞ。帝国の奴らはこちらの言い分が正しいのに領主の出鱈目な発言を信じて、またこの国に攻めてくると。

 私たちは先王陛下が騙し討ちされたときに何もせず、帝国から酷い領主が圧政を敷いても何もできませんでした。

 ですが、もうたくさんです。帝国には不当に高い税を課され、税が払えないと家や土地を奪われ、税を払うために子供を売った者までいる。

 私たちはこれ以上耐えられません。もし少しでも可能性があるなら、殿下にこの地を治めて頂きたい。そのためなら命を懸けられる。どうか私たちも一緒に戦わせてください。」

 旧王宮に詰めかけてきた領民たちは義勇兵だった。見回すと、僕らが奴隷狩りから助けた獣人たちも混ざっている。

 みんなの気持ちは受け取った。こうなったらもう帝国にぶつかるしかない。

 「ありがとう、みんな。一緒に帝国に意地を見せよう。」

 周囲一帯から地響きのような歓声が上がった。


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