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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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24話 先遣隊の情報収集

 街道を警備する帝国軍の拠点で馬を替えながら、シューネヴァルトに急いだ。

 帝国騎士団は何かあったときに即応する部隊だ。私が出発した二日後には進軍するだろう。騎士団の動きを止めようとするなら、急いで現地の状況を知る必要がある。

 先遣隊の12名と一緒に街道を飛ばしていると、一羽の鳥が近づいてきた。

 猛禽らしき鳥の接近に騎士たちが身構えるが、私のよく知っている鳥だ。

 「この鳥はノルトライン家が飼っているんです。」

 カリンが説明してくれて、周囲の騎士たちは警戒を解いた。

 馬を止めると、私の差し出した右腕に隼はとまる。

 「黄薔薇(ゲルプローゼ)、久しぶりだな。元気にしていたか。」

 黄薔薇(ゲルプローゼ)は一声鳴いた。言葉が通じているわけではないだろうが、気持ちは通じていると思っている。

 「みんな、済まないが小休止にさせてくれ。」

隼の足に結ばれる紙を解いて読むと、やはり父からの手紙だった。シューネヴァルトの領民の叛乱は何か事情があると思っていたが、やはり領主の悪政が原因であり、領民たちは帝国の自治領になることを望んでいるようだ。

 父の手紙には今回の不審な動きは皇子派が評判を落としたくないと画策したのだろうと書いてあった。また、現地の状況が分かったら隼を使って急いで知らせるようにとも書いてある。

どうやら父は皇子派の動きを見過ごさず、どうにか止めようと考えているようだ。これは責任重大だな。 私が現地の状況を早く把握することが必要だ。

 幸い、先遣隊は私が信頼している騎士ばかりだ。情報をある程度共有して協力してもらおう。

 「みんな、聞いてくれ。騎士団はシューネヴァルトの領民たちの叛乱を鎮圧するように言われている。 しかし、今、領民たちは領主の圧政に耐えかねて蜂起しただけで、帝国の自治領になることを望み、これ以上戦う意思はないという情報も届いた。だから現地の状況はどうなっているのか、先入観を持たずに調べることにしたい。」

 先遣隊のメンバーは頷いてくれた。

 これまで以上に先を急いで進み、最低限の休息で馬を飛ばした。

そして帝都を出てから三日後にシューネヴァルトの中心都市であるグリューネブルクに着いた。

 今回は偵察任務だから、シューネヴァルトに一番近い街道の帝国軍拠点で鎧を脱ぎ、旅の商人に偽装した。

 久しぶりにグリューネブルクに来たが、風景は変わっておらず、懐かしかった。

 以前から知っている評判の良い宿で部屋をとり、手分けして情報を集めに行く。


 街の様子は叛乱が起きたとは思えないくらい落ち着いていた。

 街の人たちに最近争いがあったようだがと聞くと、みんな口を揃えて、「悪政を敷いていた領主を王子たちが追い出してくれた」と嬉しそうに話した。

 領主は真っ先に逃げたらしく、この街にはいないようだ。領主が生命の危機にさらされているというのは嘘ではないかと思われた。

 いったん隊員たちと集まって情報を共有してから、私は一人で出かけた。

 グリューネブルクの街の中でも商店の集まっている地区に行く。

 目当ての店は小さな衣料品店だが、昔と同じ場所にあった。

 「いらっしゃい」と声をかけたおかみさんが、あれっという顔をしたので、思い出してくれたのかもしれない。

 「お久しぶりです。ボーメです。」

 「まあまあ、レーナちゃん。久しぶりねえ。」

 この店は同級生の女の子の家で、おばさんは気さくな良い人だったので、何度か買い物に来ていた。

仕事で近くに来たので寄らせてもらったと告げて、おばさんと世間話をする。

 帝国には住民たちが税を払わないという噂があるというと、おばさんは「とんでもない。みんなきちんと納めてた、というよりも無理やり取り立てられていた」と憤った。不公正な裁判で土地を取り上げられた人もいたらしい。

 「そうだったんですか。帝国人の一人として申しわけなく思います。」

 「レーナちゃんが悪いわけじゃないよ。でもねえ、領主が酷い奴だったから、みんな苦労はしたよ。まあリヒト殿下が解放軍を率いて追い出してくれたけどね。」

 「リヒト殿下というのはどなたですか?」

 「ああ、レーナちゃんは知らないよね。シューネヴァルト王国の生き残りの王子様なんだよ。先王夫妻が亡くなったときに侍従長に預けられていたらしくてねえ。最初に聞いたときは、あたしたちも驚いたもんさ。」


 シューネヴァルト王国の王子が生きていたという情報は、他の騎士たちもまちの人たちから聞いてきていた。

 「どうやら王子が生きていたらしいな。しかし、10年以上も正体をよく隠していたな。」

 私がつぶやくと、カリンが答えてくれた。

 「姫様、私が聞いたところでは、職人の子どもとして育っていたそうですよ。」

 姫様は止めてくれと言いつつ、職人の息子というと誰かさんと一緒だなと思っていると、他の騎士がカリンにもっと詳しい情報を得たかと聞いた。

 「ちゃんと聞き込みましたよ。ふふん、私の情報収集力に感心してもいいんですよ。王子はグリューネヴァルトの職人街でアルノルト・バウムガルテンと名乗っていたらしいですよ。」

 何だって!

 「カリン、本当にアルノルト・バウムガルテンと名乗っていたのか?「はいかいいえ(ヤー・ナイン)」で答えてくれ。」



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