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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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19話 領主軍との戦い②

 領主軍が本格的に出撃してくる。

 そう聞いた僕らは、相手の陣容を乱すために狼人族の一隊が敵にわざと見つかり、引き付けるという策を講じた。

 狐人族の斥候によれば、予定どおり領主軍は狼人族の一隊を追っている。

 相手が近づいたら距離を開け、また相手を近づかせるということを繰り返した結果、狙い通りに敵の陣容は細長く伸びているようだ。

 今回の領主軍の出兵規模は1200人くらいのようだ。

 領主軍は約1600名で、100人ぐらいの獣人狩り部隊2つが壊滅しているから、出せる戦力を一気に投入してきたのだろう。

 戦力を小出しにせずに集中するのは正しい戦略だ。領主軍の指揮官は無能ではないようだ。

 だが解放軍の人数は1800人くらいいる。今回はほぼ全軍で出るから、人数のうえでもこちらが有利だ。

 敵には解放軍の人数は少ないという情報を弧人族から流してもらっているが、その効果もあるのだろう。

 ここまでは予定どおりに敵は動いている。

 「狼人族の部隊には、盆地まで奴らを引き付けて逃げるよう伝えよ。ただし、無理だと思ったら奴らを引き離しても構わない。」

 メールス卿が伝令に指示をした。

 足の速い(シュネル)狼人族が本気を出すと、人族は追いつけない。わざとスピードを遅く(ラングザム)して引き付けるように頼んでいるが、人数は敵のほうが多いので無理をしないようにと伝えている。

 伝令が退出してメールス卿と二人になったところで、卿に話しかけた。

 「さて、僕らも行こうか。」

 最近は王子らしい話し方にも慣れてきたけど、いつも仮面をかぶっているみたいで疲れる。

 妹以外にも普通の話し方ができる相手が欲しかったので、他に人がいないときは普通に話して良いかとメールス卿に聞いたら、「殿下に信頼してもらっている証ですな」と応じてくれた。

 メールス卿のほうは口調は柔らかくなっても丁寧語のままだが、少しずつくだけてきた感じはする。

 それはさておき、僕が前線に出るというとメールス卿は渋い顔をした。

 「殿下には樹海の森の家(ヴァルトハオス)で待っていてほしいのですが。」

 「部下を危険にさらして自分は安全なところにいる指揮官は信頼されるかい?僕は名目だけのトップだけど、それでも前線に行く義務があると思うんだ。」

 「仕方ありませんね。鬼人族のカヤ殿の言うとおり、まだ若い殿下にばかり重荷を負わせるのは不本意なのですが。殿下のお覚悟は分かりました。」

 良かった。どうにか前線に出られるようだ。

 実はアルセイドと契約したおかげで木の精霊魔法が使えるようになっている。

 まだ茨の蔓で敵を足止めするような初級魔法しか使えないが、最近は戦力だと周囲も考えてくれている。

 樹海で迷わなくなったし、本当にアルセイドには感謝だ。

 

 盆地につながる道の両側の丘に、私たち弓隊は布陣している。

 敵はこの盆地を解放軍の本拠と信じたようだ。

 しかし、こんな丘に挟まれた道に突っ込んでくるとしたら、こちらを舐めているのだろう。

 幸いにも、狐人族の流した情報を敵は信じているようだ。

 「慌てて射たらダメだよ。敵の3分の1ぐらいが通り過ぎたところで、一斉に両側から射るんだ。」

 周囲の弓兵に声をかけて回る。

 解放軍の拠点である樹海の森の家(ヴァルトハオス)に出入りしているのは、いざというときに兄さんを助けるためだ。

 でも弓の腕を見せたら、今度は教えてくれと頼まれて、いつのまにか弓隊の隊長みたいになってしまった。

 最初は兄さんのことしか考えていなかったが、今では弓兵たちも無事でいてほしいと思う。

 そろそろ動きがある頃だろう。

 獣人の中でも視力の良い者が木に登って周囲を警戒しているが、みんなソワソワしながらその木の方を見ている。

 「味方の狼人族が近づいて来た。」

 警戒役の声にみんなが緊張する。

 いよいよ戦が始まる。

 「領主軍が来たぞ!」

 私の目にも敵の姿が見えた。

 狼人族を追いかけているうちに陣形が崩れたのだろう。敵の陣形は細長く伸びている。

 「まだだよ。もう少し引き付けて。」

 400人くらいが通り過ぎた。

 「今だ(イェッツト)!」

 私が叫ぶと周囲の弓隊は一斉に矢を放った。

 合図の狼煙が上がり、少し遅れて反対側の丘からも一斉に矢が放たれた。


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