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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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18話 領主軍との戦い①

 「そうか、奴らの本拠が分かったか。」

 軍に叛乱軍の本拠地を探すよう命じておったが、ようやく情報を掴んだようだ。

 最近、獣人狩り部隊が2つとも襲われたが、どうやら獣人どもと王国の残党が組んで解放軍などと称しているらしい。

 儂の悪政から領民を解放するなどと言っておるような奴らを放っておくわけにはいかん。

 「解放軍と称する者たちの本拠は樹海に近い丘陵地帯の盆地にあるようです。狐人族の商人が商売の便宜を図る代わりに情報を提供してまいりました。」

 「ふむ。所詮は獣人よ。味方を(ゲルト)のために売るか。はは、シューネヴァルトの残党どもめ、戦力が足りないからと獣もどきと手を組むからこうなるのだ。」

 「それで、いかがいたしますか。」

 「決まっておる。正面から叩き潰すのみだ。狼どもに樹海からゲリラ戦を仕掛けられると面倒だったが、王国の残党と組むために樹海の外に拠点を築いてくれたのだから、戦いやすいというものだ。」

 帝国中央でのし上がるには金がいる。獣人奴隷は高値で売れるから獣人狩りをしていた。その部隊が2つとも壊滅したのは痛かった。

 だが、わしはこんな田舎領主で終わるような器ではない。

 領民どもの税を上げたうえで、国に納める分を減らすことで、資金はある程度確保できておる。

 さらに叛乱軍の鎮圧という成果も挙げて、帝都での栄転につなげるのだ。


 「王子殿下、コトルリ殿から連絡がありました。領主軍の幹部と接触し、嘘の情報をうまく流せたとのことです。我ら王国の旧臣と組むために狼人族が樹海から出て盆地に本拠を築いたという話を敵は信じ込んだようでございます。」

 「報告ありがとう。コトルリ殿にはとても感謝している。それから、僕らは狐人族が(ゲルト)で動くわけじゃないと知っていると伝えてほしい。」

 伝令が下がったところで、僕はメールス卿に笑顔を向けた。

 「卿の見込みどおりだったよ。」

 「はっ。領主たちは王国の民や獣人を見下しておりますから、狐人族が同族を(ゲルト)で売るという話を信じると思っていました。自らが軽蔑されていることを逆手にとった弧人族の見事な働きだったと存じます。」

 一方でメールス卿は「領主軍も馬鹿ばかりではありませんから、盆地が本拠地であるかのような偽装もしておきます」と付け加えた。

 このあたりの慎重さもメールス卿の長所だと思う。


 数日後、領主軍が出撃の準備をしている動きも伝わってきた。

 どうやらこちらの思いどおりに動いてくれそうだ。

 「領主軍の連中は囮に食いついたようですな。こちらの描いた絵のとおりに動きつつありますな。」

 「そうだね。みんなのおかげでどうにか上手くいっている。ただ、戦では何が起こるか分からないと僕に教えてくれたのは卿だ。まだ油断はできないだろう。」

 「そのとおりでございます。では、皆に準備を始めるよう伝えて参ります。」

 トリーア卿が去った後で妹がやってきた。

 「兄さん、ついに準備が整ったみたいだね。」

 「ああ、装備の問題もどうにか解決したし、ここまで準備できたのは、みんなが力を貸してくれたお陰だ。エルナにも感謝しているよ。

 今では弓隊にエルナが欠かせないことも分かっている。でも、くれぐれも無理はしないでほしい。」

 「大丈夫だよ。前にも言ったけど、私は逃げるのには自信がある。兄さんこそ無理はしないでね。」


 「狼どもはどこに行った?」

 領主殿の命を受け、叛乱軍の拠点に向けて進軍していたところ、少人数の狼人族の部隊を見つけた。戦の景気づけに蹂躙しようと思ったら、奴らは戦いもせずに逃げ出した。

 斥候が報告に来た。

 「隊長、狼人族は樹海の近くの盆地に向かったようです。」

 そうか、盆地に逃げ込むか。狐人族の商人の情報どおり、奴らの本拠は樹海の近くの盆地にあるようだ。

 私は領主殿と違って慎重なので、商人の情報が正しいかどうか裏を取るために斥候を出したが、確かに盆地には多くのテントが張られていた。

 このところ巡回中の部隊が二つ叛乱軍にやられたが、逃げてきた者に聞いたら、奴らの弓は青銅の鏃を使っているので、我らの鉄の鎧は貫けないようだった。

 樹海に隣接する丘陵地帯に踏み込むとなると、普通は側面の丘からの矢を警戒すべきだが、今回は大丈夫だろう。

 帝国軍の強さは装備の良さも大きいのだ。帝国中央の騎士団ほど良い装備ではないが、我らも標準的な装備は整えている。

 叛乱軍に敗れた二つの部隊は不意をつかれたようだが、きちんと警戒しながら進めば勝てるはずだ。狐の商人の情報では、叛乱軍の人数は我ら領主軍よりも少ないようだしな。

 「狼どもの逃げ足は早いようだな。だが奴らの本拠地は分かっている。逃がすな、追うぞ。」



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