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リヒト戦記~辺境の滅んだ小国の再興記  作者: スタジオぞうさん


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13話 浮かび上がった課題

 獣人狩りをしていたのは、領主軍だった。

獣人の女の子を盾にしようとした奴はメールス卿が顔を知っている兵士だったし、戦場の敵の死体を検めると、領主軍と思われる良質な装備だった。

 解放軍のみんなは、領主軍の卑劣さに怒り、今回勝ったことで士気が上がっている。

 だが勝ったのは良かったが、こちらのほうが人数も多く、不意を突いたのに死傷者も出た。

 防具の違いは大きい。敵はチェインメイルを着けているのに対して、狼人族の大半は皮鎧だ。旧臣たちには古くてもそれなりの装備を持っている者も多いんだが。旧臣たちには怪我人は出たものの死者はいなかったが、狼人族には亡くなった者もいた。

 敵の防具のせいで味方の矢は効果が薄い中で、獣人の女の子を盾にしようとした敵を射抜いたのは、やはりエルナだった。「ふっふーん、私がいて良かったでしょう」と胸を張る妹には感謝せざるを得ない。本当は戦場に来てほしくないんだが。

 しかし、妹のような弓の達人でもなければ、味方の矢は敵の鎧に阻まれるのは問題だ。もっと鋭い鏃が欲しい。

 トリーア卿から諸国の事情を教えてもらったとき、帝国軍が強い理由として、経済力を背景とした装備の良さがあると聞いたが、今回のことで痛感させられた。

 課題も浮上したが、良いこともあった。

 敵の中に投げ込まれた小袋には胡椒が入っていたが、袋を投げ込んでくれたのは、斥候役の弧人族だった。

 「高価な胡椒をあないなことに使うなんて、大損やわ」と族長のコトルリ殿は嘆いたらしいが、胡椒を使った者を責めることはなく、よくやってくれたと褒めたと聞いた。

 狐人族は商売を生業とするので利害で動く部族だと言われるが、損をしても人を助ける気持ちのあることが分かった。

 味方への信頼が増したのは、嬉しいことだ。


 獣人狩りと戦ってからしばらくして、解放軍の主だった者が森の家(ヴァルトハオス)に集まり、今後のことを話し合った。

 初めての実戦だったが、狐人族の斥候は機能したし、狼人族と旧臣たちも、まずまずの連携を見せた。何より、一緒に戦ったことで旧臣たちと獣人たちの信頼感が高まったことは良かった。

 だが、領主軍との装備の差は大きいことも痛感した。今回は敵の不意をつけたが、敵が混乱していなかったら、もっと苦戦しただろう。

 「うちらも八方手を尽くしてるんやけどな、良い装備はなかなか手に入らへん。領主が代わってから、人間の商人は獣人との取引に消極的になってしもうて、お金があっても良い装備は売ってもらえないこともあるんや。」

 コトルリ殿は悔しそうな顔を見せた。

 狼人族のグウィン族長は身体能力で何とかすると言ってくれたが、このままでは多くの犠牲が出るだろう。甘いと言われるかもしれないが、民を守るために戦うのに、多くの民を死なせるのは何か違うと思う。

獣人狩りとの戦闘で亡くなった狼人族の葬儀に出たが、小さな子どもがいたことを知り、心が痛んだ。やはり 味方の犠牲は最小限にしたい。

 質の良い防具を入手することは最優先の課題だ。

 「トリーア卿、何か方法はないだろうか。」

 「そうですな、鬼人族の協力を得られると良いのですが。彼らの鍛冶の腕なら、良い装備も作れるでしょう。ただ、鬼人族には連絡がつかないのです。」

 そうか、鬼人族か。遠く東の地から流れてきた亜人の一部族である彼らは、鉄を生産し、武器を作ることができるので帝国に危険視され迫害されている。

 獣人たちによると、鬼人族は、以前は森の奥からときどき出てきて、鉄製品と食料や衣料の物々交換をしていたらしい。最近は亜人を敵視する領主に目を付けられことを避けて、めったに姿を見せなくなったようだ。

 鬼人族の情報を集めることを申し合わせて会議は終わった。何とか鬼人族と接触できると良いんだが。


 それにしても、領主軍が獣人狩りをしていたことには驚いた。

 今の領主の悪政ぶりを考えると驚くことじゃないかもしれないが、それでも一線を越えているという印象だ。

 最初の領主だったノルトライン卿は良い統治をしていた。そして、良い統治をしたことで評価されて帝都に栄転したと聞いていたから、それも帝国がまともに統治されている印象につながっていた。

 こんな酷いことが行われているとは。

 正義感の強かった同級生のレーナが知ったら、どんなふうに思うだろう?


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