過去
男2人は驚いたようにハイナを見た。
「ぼ、僕の名前は呼んでくれないのか!?」
「アルスさん…でしたっけ?」
もう1人の男の名前はアルス。
ハイナはゼストとアルスの会話を聞き、名前を覚えた。
アルスは目を見開いて喜んだ。
「聞いたか、ゼスト!」
ゼストは「はいはい、」と呆れながら
「ところでハイナ、なぜ俺を呼んだ?」
ハイナは一息置いて話し始めた。
「外に、出てみたいです。」
「ダメだ。」
ゼストはハッキリと伝えた。
「なぜですか?」
「妹だから、家族だからだ」
「なら、家族のお願いとして聞いてください。」
「ダメだ。」
「僕が付いて行っても?」
「あぁ、ダメだ。お前なら余計にな」
これ以上ゼストは何を言われても口を開かなかった。
2人の男が部屋から出ていくとハイナは窓を眺めた。
「外は自由なんだろうね…」
そう呟いた。
ハイナは夜遅くまで寝ないと決めた。昼間ゼストに伝えられなかったことがある。
流石に別々に寝て欲しいということだ。
というわけで、日が落ちて何時間も経っているが全くくる気配がない。
すると、扉の向こうから足音が聞こえた。
扉が開く音がする。
椅子に座っていたハイナは扉の方に視線を向けるとゼストと目があった。
「ハイナ、まだ起きていたのか」
昼間と違って柔らかい声色だ。
「伝えたいことがあります。」
「明日でも良いか?今日はもう、疲れてしまった。」
「ダメです!私は貴方と一緒にベッドを使いたくありません!」
ゼストは昼間と同じ声色でこう言った。
「ダメだ。」
「また、それですか。」
「あぁ、なんと言われてもダメだ。俺が寝ている間にお前が消えていたらどうする、お前が攫われていたらどうする。」
ハイナの目を見て言った。
「そんなことあるわけ…」
「あるさ、だってお前は俺の妹なんだから。王の妹なんだから。毒殺、誘拐、王の弱みを握れるならなんでもありだ。そんな世界なんだよこの世界は。」
「なら、私が1人でこの部屋にいるときは…?」
「昼間は俺が起きているだろ。反応はできる」
そしてゼストは「ほら、もう遅いだろ。寝るぞ」と言った。
ハイナは納得したのかベッドに入った。
もちろん、ゼストに背を向けて。
「お前がどれだけ俺のことを嫌おうと俺はお前を守るから。それが、兄ってもんだろ」
その言葉からハイナの記憶は途切れている。
「おはよう、起こしてしまったか?」
「おはようございます。自分のタイミングで起きただけですよ。」
「そうか、」
ゼストはニコっと笑った。
彼の目をよく見ると自分の目の色と同じだ。だが、少し…濃い?
「私たち目の色が似ていますね。濃さが少し違うようですが」
「あぁ、そうだな。俺が兄でお前が妹だからなんだろうな。」
そう言うとゼストは「朝食取ってくるよ」と言って部屋から出ていった。
そして、朝食を食べてしばらくしてゼストが仕事をしに部屋から出ていった。
ハイナはあることをしようとしていた。
ハイナは窓から落ちた。相当の高さだったようで、全身が痛い。骨折したのだろうか。すると数秒で痛みが消えた。
「ウッ…あれ、痛くない」
何はともあれ脱出成功だ。
ハイナは隙があるうちにあの部屋から出て行こうと思っていた。そして、昨夜窓に鍵がかかっていないことを確認し今日実行に移した。
「よいっしょ」
ハイナは立ち上がり、歩き始めた。
庭なのだろう。道と思われるものが続いている。
すると、話し声が聞こえた。
女性の話し声だった。
「それで〜…」
「そうなのですか!?」
「声が大きいわよ」
「「「「ふふふふ」」」」
綺麗なドレスを見に纏い、談笑しているようだ。
「あ、あの…!」
声をかけようとすると口元が手に覆われた。
「ダメだって」
聞き覚えのある声だった。
「ゼストさん!」
ゼストはハイナを木の後ろに隠した後、令嬢たちに近づいてこう言った。
「そこの令嬢さん方、ここは俺の敷地だ。」
「ここは魔王陛下の敷地…
ってまさか、」
「「「陛下にご挨拶申し上げます」」」
令嬢たちは両膝を地に着け頭を下げた。
「わかったならさっさと出て行ってくれ。お前たちにここの使用許可を出した覚えはない。」
「も、申し訳ございません」
そう令嬢たちは言うと足早にその場から離れた。
「もう出てきて良いぞ。」
ハイナはその言葉で道に出た。
「ダメだと伝えたはずだ。」
「私は外に出たいと伝えたはずです。」
「ダメなものはダメだ。昨日理由を説明しただろう。」
「ですが…!」
そこに突然
「はいそこまで。2人とも、双子なだけあって似てるね」
アルスが割り込んできた。
「「……」」
「双子なんですか!?」
「余計なことを言ってくれたな」
ハイナは驚きの目をゼストに向ける。ゼストは忌々しいと言うような目をアルスに向ける。アルスは驚いた目をゼストとハイナに向けた。
「言ってないの!?」
「わかった、わかったからハイナ、落ち着いてくれ。とりあえず部屋に戻ろう。それから説明する。」
ゼストはハイナに向かって必死に伝えた。自分にも言い聞かせるように。
3人は一つの机を囲んでそれぞれ椅子に座った。
「もう、このタイミングを逃したら伝えられないよな。」
覚悟した目をゼストはアルスに向ける。
「君が言いにくいなら僕から言っても良いけど…」
「いや、それはいい。俺が伝えるべきことだから。」
3人はそれぞれ目を合わせた。
「ハイナ、真実を伝える。この真実から目を背けてはいけない。この真実を受け入れるんだ、全ては俺が悪いことだ。良いな」
「は、はい。」
ハイナは今から何が始まるのかと不安になった。
「俺とハイナが双子、これは紛れもない事実だ。
そして、俺たちの他に俺たちには兄弟がいた。兄と姉がいた。だが今はいない。俺が生まれてきてしまったから。俺が兄妹全員の魔力を奪った。」
「どういうことですか…?」
「俺とハイナは膨大な魔力を持って生まれてきた。だが、他の兄弟たちは違う。魔力を持っていなければ、俺たちの父、先代魔王の操り人形に相応しくなかったんだ。そして、ある日双子が生まれた。2人とも膨大な魔力を保持している!だが、王の席は一つしかなかった。だから、男である俺が選ばれた。王になるために俺は昔からもっと膨大な魔力を得るようにある実験を行われ続けた。体内に存在する魔力を増やす実験だ。」
「ま、まさか!」
「あぁ、そのまさかだ。俺はお前の魔力を有している。そして、お前は血に魔力が溶けている。」
「え?でも彼女にはラミアの体が移植されてないよ?」
「は?」
「ラミアの体を移植って、どういうことですか!?」
ハイナは声を荒げる。
「そのままの意味だ。一旦落ち着け。
良いか、血に魔力が溶けているということは魔力は血がある限り生まれ続ける。血を失った時も同様に、魔力が減る。その体質は他人に魔力を移すと言う点では便利だが、欠点があるんだ。
それは、血液一滴に対しての魔力がとても大きいから普通に生活していると魔力暴走を起こしやすくなる。」
「なぜ、魔力暴走を起こしやすくなるのか。もう少し詳しく教えてもらっても良いですか?気になります。」
「我々の体には許容できる量が決まっている。そして、魔力と血液はどちらとも体内で作り出される。
お前の体を少し覗いてみたら、俺と同じぐらい血液が作り出されている。これによってお前は魔力許容量を大きくはみ出すことになる。魔力と血液が1:1でない限りはこの状態は続くだろう。
だからラミアの体の一部が必要なんだ。アイツらは血を他の生物より多く日常生活で消費するからな。」
ハイナは魔力暴走という言葉に思い当たる節があったが、口を開かなかった。
「ハイナ、大丈夫。僕が守ってあげるから。目を閉じて。」
そういうとアルスは彼女の肩に手を置き何かを唱え始めた。
ゼストは何も言わない。表情ひとつ変えずに見つめていただけだった。
「ハイナ、終わったよ。」
1分後ハイナは目を開けた。
「これで暴走することはないはずだ。魔力暴走を引き起こす原因を防御魔法で囲んだ。」
「流石だ。やはり俺は防御魔法は苦手だ。」
どうやらゼストも何回か私の体に魔法をかけようとしたそうだ。
パンッとアルスが両手を叩く。
「よし!これでとりあえずは安全かな!
ねぇ、ゼスト。流石に外に出さないのは可哀想だよ。」
ゼストは黙った。
そして、口を開く。
「わかった、わかった。じゃあ鎖を繋がせてくれ。俺とお前を繋ぐ鎖だ。それをつけるのであればこの城のどこに行っても良い。ただ、俺の許可は必ず取ること。」
「ゼスト!それはやりすぎだ!」
「これ以上は譲れない。鎖は魔法で作るし、見えなくするから。重さも感じないぞ。」
「そういう話じゃない!それは彼女に自由を与えていない!」
「俺が、いつ、自由を与えると言った?」
ハイナはゼストが怖く感じた。
鋭い瞳がアルスを見ている。視覚対象が私だったら思わず言葉を失っているだろう。
「わかりました!そうしましょう!鎖を繋げてください!足首で良いですか!」
「ハイナ…」
「あぁ。足首に繋げる。」
ゼストは一瞬でハイナの左足首に鎖をつけた。
「これは、お前を守るものだ。良いな。」
先程アルスに向けていた鋭い瞳だ。
「は、はい。」




