悟の推理力
「はぁ……悟!! ゴメン。もう一度謝らせて。私が能力者だったのを黙ってた事」
紗季や小鳥遊先生が私を拉致した事の文句よりも、悟に面と向かって謝るのが先だと思い、私は掃除用具入れから外に出た。
「大丈夫だよ。小鳥遊先生の行動でそうじゃないかな? って思ってたから。っと……」
悟も掃除用具入れから出ようとしたけど、態勢を崩しそうになった。それを私が何とか支える事が出来た。悟は【透視】の反動が出て、数分間は目が見えなくなってるから。
「……大丈夫そうですね。私は先に保健室に戻りますので、教室の鍵は白に渡しておいてください。三人共、遅刻しないように。今日の事は有野さんに詳しく聞いてください」
小鳥遊先生も空気を読んだのか、私達三人で話す事があるのだと、先に保健室へと戻ってくれた。悟の目の事は私と紗季がいれば大丈夫だと思ってくれたのかも。
「はいはい……単なる私の都合に過ぎないんだけどさ」
この能力者の集いは小鳥遊先生がやるとは言ってたけど、紗季自身が漫画のために開いたわけ?
「そのお陰で、陣子が能力者だと知れたし……何となく理由も想像出来たから。蛍……じゃないの? 蛍が好きになったオジサンが【変身】した陣子だったり……」
「えっ!! 何でそう思うの?」
「おっ!! 鋭い推理だな」
悟は一昨日まで海野さんだったのに、蛍と呼び捨てになってる。昨日、【愚弟】に悟と蛍で行った時に仲良くなった?
というのはひとまず置いといて、蛍が惚れたのが私だと何故分かったの? 紗季に至っては答えを言ってるようなものなんだけど……
「二人が蛍の恋を反対したからかな? 年の差があっても、応援する気がしたの。紗季の場合は面白がるというか……けど、陣子がオジサン本人なら蛍を助けたのも納得出来るから」
うっ……的を得た発言。悟は人の事をよく見てるかも。
「はぁ……そうなんだよ。私の男に【変身】というよりも、オッサン。年齢を弄る事も出来ないわけで……まさか、惚れるとは思わないでしょ。私も【変身】は隠したい事もあったから、こんな状況になるとは……」
「分かるかも。昨日、【愚弟】に行ったけど、蛍は店長に教えて貰いながら自分で作る事になったの。そこまで真剣なんだと思ったけど……アレを見ると余計に言いにくいかも」
「そうなんだよ。あの本気度が怖くて」
「製作に集中するから、『オジサン捜しは完成までは止めるって、陣子に言っておいて』とも言ってたから凄いよね」
それは新しい作戦を考える猶予が出来たと思うべきか、蛍のオッサン愛が高まっていくと恐怖すべきなのか……
「丁度良かった。単行本の表紙やオマケ漫画も書くように黒さんに言われたんだよ。それに連載の方もあるし、陣子と悟の協力は必然。サクッと陣子が言えるようにね……他の能力者も一緒だと私的には一石二鳥」
本当に自分の都合じゃないの!? 花畑君の母親の件でアノ作戦は失敗になるのを伝える前に、紗季を一発叩いておかないと。