透視VS透明化
「申し訳ないですが、ここで時間です。よろしければ、能力者の集いはこの時間、金曜日の朝にしようと思ってます。勿論、先程言いました【ライソ】のグループを作るので、それに参加しての相談もありですし、個人での繋がりも持っても構いませんから」
時間? 自分の服を調べると、ポケットの中にスマホがあった。調べてると八時十五分を過ぎたところ。
「そんな時間か? 誰もロッカーを開けなかったわけだし、一人ずつ退場かな。姿を最小限にするために最後に来た雪見からにすればいいんだけど……」
紗季がそう提案するのは、姿見先輩に振ってるのかも。【透明化】の能力は続いてるのであれば、彼女が最後にならないと、ドアを開けたフリをすれば、この場所に残っていられるわけで……
「私の【透明化】か? 実は最初からロッカーの中に入ってない可能性もあるけどね……というのは冗談だから」
掃除用具入れのドアを外からでも閉めれるわけで……姿見先輩も疑わせるような言葉を言うから!!
「そこは大丈夫。私の【透視】だと、姿見先輩の姿は確認出来たから。ちゃんとロッカーにいるし、教室の外で待ち伏せも出来ないですよ」
悟は【透視】を使ったみたいなんだけど、気分が悪そうな声。反動は効果が切れたわけのはずよね?
「【透視】の方が【透明化】よりも強い……勉強になります。では、姿見さんから雪見さん、猪狩さんの順番でいいですか?」
小鳥遊先生は能力の力の差が分かり、少し嬉しそうだ。けど、悟が姿見先生の姿を見えてたら、響鬼先輩や雪見の顔も見えてるんじゃ……
「あの……それだと井上さんだけが、私達の顔が見えていて、不公平かな……って」
雪見がそれに気付いた……って、私以外にも気付くわな。
「そこは信じてもらうしかないけど、逆に顔は見えないんですよ。一番強力なクールを選んだので、透け過ぎて……内臓部分が……そのせいで少し気分が」
裸を通り越して、内臓まで……それは慣れてないとグロ映像でしょ。そこまでしないと【透明化】を視認出来ないのかも……
「それはそれで何か嫌だけど、私が早々に退場すれば、目を閉じていられるだろ」
ロッカーのドアが開く音が聞こえて、それから教室の扉と続く。
「……はい。姿見先輩は教室を出て、廊下に待機もしてません。キツいので目を閉じます」
「あの……さっきはごめんなさい。無理して能力を使ったみたいなのに」
「……おい。キツいなら保健室にでも行けよ」
姿見先輩に続いて、雪見、響鬼先輩と教室を後にする。
本当に悟の声が辛そうなんで、雪見も信じたようだ。響鬼先輩に限っては心配して、声をかける程だ。保健室じゃなくても、保健医兼能力研究者が近くにいるんだけどね。