推理小説ではごさいません
「そうだぞ。人の話は最後まで聞けと婆ちゃんから聞かなかったか? 次は回想部分に入るんだからかな」
この一言で響鬼先輩が婆ちゃんっ子だと分かってしまうよね。そこもギャップがあるというか……
「あれは始業式だったか。いつものようにモブに絡まれ、遅刻したんだよ。【テレパシー】が使えたら回避と出来ると思ったんだけど、上手くいかなかったわけ。その効果は学校まで続いたんだけど、周囲の奴等の心の声は恐怖とか呆れとか。心の声を聴けるのは一人なんだけど、チャンネルみたいな切り替える事は出来るから」
「三年にもなって喧嘩? とも思うわね。進学とか就職を考えないといけない時期だし。ある意味、能力を有効活用出来れば楽かもしれないけど」
三年生になったら進学か就職……紗季は漫画家だからいいけど、一年後だと考えると不安になるわ。能力の有効活用だって、オッサンよ。何も思い付かないから!! 姿見先輩は考えがある?
「喧嘩売ってくる方が悪いんだよ。私も好きでやってるわけじゃないからな。話を戻すぞ。それでも影で言われたり、ヒソヒソされるよりはマシだから、流し聞きしてたんだ」
「こ、心が強いんですね。コソコソ話も自分の事を言ってるかもとビクビクしますから」
雪見が相槌を打つ。紗季とは違って、姿見先輩と雪見は割り込む形じゃなく、話の邪魔する感じじゃないから。
「そこで恋心のある声を聞いたわけだな」
そう思ったそばからこれだ。流れ的に分かっても、そこは響鬼先輩が言いたいところだぞ。
「ち・が・う!! 純粋に私の体を心配する声だったんだよ。自分の声だけど、優しさを感じたんだ。というか、男か女も分かってないからな。恋愛かどうかなんて」
「恋愛にも色々あって、B痛い!!」
「はい。有野さんもいい加減邪魔しないように」
小鳥遊先生が紗季の頭を叩いた音が。真面目な話にBLとか百合の話をしてる場合じゃないから。
「まぁ……そこから毎日その声を捜してるわけ。私の【テレパシー】の効果は多分、三教室分くらいかな? 左右真ん中? 廊下もあるから結構広いんだよ」
「同じクラスが一番可能性が高いと思うんだけど、廊下で怪我した猪狩先輩の姿を見た可能性もあるんですよね」
悟の言いたい事は分かる。もし、花畑君が怪我をして登校した姿を見たら印象に残るわけで、響鬼先輩の場合も一緒。別のクラスでも心配出来るのよね。
「視線は? 響鬼なら、そこらへん敏感に感じるんじゃないの?」
所謂、ヤンキーのメンチ切りじゃない? 目と目が合うというか……漫画やアニメでも不良は敏感なんだよね。
「私は不良じゃないし、そんなセンサーはないよ。けど、席を一番後ろにされてるから、私を見る奴は分かるかもしれないけど」
「何かヒントみたいなものがあれば……」
なら、同じクラスじゃない? いや……一度見ただけで十分か? 別のクラスが想像するのと一緒だし……というか、これは恋愛というより、推理小説みたいな展開だぞ。