姿見先輩の能力
「私の【透明化】も井上さんの【透視】と一緒で反動があるのよ。それも【透明化】した時間+それと同じ時間、みんなの記憶から私の存在が消える。一緒にいた友達に『誰?』とか言われるわけよ」
「……おい!! 相談内容が重すぎなんだよ。後に控える私の気持ちにもなれよ。それを失くす方法を考えろってか!?」
響鬼先輩が言いたい事は分かる。【透明化】の反動というよりも代償でしょ。つまり、この時間に姿見先輩がいる事も私達は忘れるわけでしょ。少しの時間でも友達から忘れられるのは酷くない?
「なるほどな。確かにバトル漫画向きだし、ミステリーにも使えるかも。この出来事を文字に残しておけばいいわけだろ?」
紗季はあっさりと受け入れてるし。多分、スケッチブックにも設定を書き込んでいるのかも。確かに文字で残せば、勝手に消える事はない……はずよね?
「確かに犯罪でも使えそうですね。その反動も有効活用出来そうですが……」
紗季のミステリーという言葉から、小鳥遊先生は発想を犯罪に!? 能力を研究してる人から聞くと怖いんだけど……
「姿見さんが言ってる事は嘘だから問題ありませんよ」
「嘘!? お前は嘘をついたのか」
という事は、響鬼先輩は能力を発動してない。パンの耳を持ってきてないし、他に発動条件があると言ってたな。
「響鬼が能力を発動してるのか試しただけよ。全部が嘘じゃないんだけど。その逆で、【透明化】になってる間の記憶が無くなるのよ。全部じゃなくて、見た事か聞いた事のどちらか? 軟水と硬水で変わるんだけどね。ちなみにジュースやコーヒーだと発動なし。お風呂に入っても大丈夫。貴女達なら、どちらを残す?」
それはそれで嫌な反動だな。聞く事を残すのが良いんじゃないのかな? 友達と一緒なら誰が話したのか分かりそうだけど……
「見る事の一択でしょ。覗きをする時、見たのを忘れたら意味がない!!」
紗季は力強く見る方を薦める。多分、悟もそうかも。男子達の裸を見たわけだしね。
「フレンチです!!」
雪見はハレンチをフレンチという始末。もの凄いオヤジギャグで、一気に体が凍えそうになったんだけど!!
「寒い寒い!! ちょっ……これも雪見の能力のせい!?」
「私も寒いです」
「確かに寒いギャグで凍えさせる能力は、自分を重ねるかも」
「す、すみません。つい……」
私以外も寒さを感じたようで、雪見はアイスを食べてきたんだろうけど……もしかしたら、これが相談事?
「ハレンチは置いといてだ。聞く事なら録音すれば問題ないでしょ。録画するよりかは皆にバレる事もないし」
付け加えて、紗季がまともに答えた。確かに録音すれば、無くした事も聞き直せる。
「そうだよね。録音という発想はなかったから、助かる。今回は見る方で、録音も聞いた事を書く事も出来ないから、響鬼が後から教えて」
「わ、私がか!? どうせ、怖がるんだろ。聞いた事を忘れるんだから」
響鬼先輩は自分に振られた事に驚いてる。小鳥遊先生や紗季に振ると思ったのかも。
「見た事は覚えてる。響鬼が教室に入るところは見てたわけだし、大丈夫さ。能力者のグループに参加しても分かる事だしね」