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我慢も限界突破しそう

「【変身】あるあるネタね。元の姿に戻る方法を探すのは……四コマ漫画的には、そこまで引き延ばしたくないかも」


 そこは落ち着いてないで、私と一緒に慌てる場面じゃないの? 紗季も私がオッサンのままだと嫌でしょ。


「陣子もそこまで慌てる必要はないと思うんだけど。スルメと栄養ドリンクだと【変身】時間が違うだけじゃないの? イメージ的に栄養ドリンクの方が強そうだろ?」


「うっ……確かに、栄養ドリンクは強そうなイメージがあるかも。スルメの時もいつの間にか【変身】が解けてたわけだし」


「まぁ……私が【変身】したわけじゃないから、簡単に言えるだけかもしれないけど。戻らなかったら、私の部屋で一緒に暮らせばいいさ」


「それは色々と駄目でしょ」


 スルメと栄養ドリンクに差があるかも? というのに気付いた時点で、気持ちは楽になった。紗季が一緒に暮らすなんて馬鹿な事も言ってくれたをツッコミながらも感謝してる。


「でも、気が楽になったわ。作業をしてる間に戻ってたら良いか」


 二十分後……戻らない。


 三十分後……区切りは良いと思うけど、兆しなし。


 一時間後……


「ここまで来ると集中出来ないわ!!」


 栄養ドリンクの力凄すぎでしょ!? 一時間過ぎても無理なんて、まさかの丸一日あるかもしれない? 


「薬の効果も六時間とか、一日三回とか言うじゃない。一時間は短いぐらいと思わないとな。時間が長ければ、出来る事も増えるかもしれないぞ」


 スルメでオッサンに【変身】する時間は十分間だから、一時間でも相当長いから!! それに長時間オッサンになれたところで、何かしたい事なんて……


「どうした? 顔色が悪くなってないか?」


 どうしたも何も……トイレに行きたいのよ。紗季の家だからって遠慮してるわけじゃなくて……男の体になってるわけで。


「な、何でもない。作業に集中すれば大丈夫だから」


「水を飲んで落ち着けば? 栄養ドリンクの効果も薄まるかもしれないし」


 紗季は冷蔵庫からペットボトルの水を取り出してくれたけど、ありがた迷惑なのよ。それを飲むとアレが加速してしまうから。


 更に時間は過ぎて行き……


「もう無理!! 限界にも程があるわ」


 一時間近くも持った方だと思うわ。それでも【変身】が解けないなら、羞恥心を捨てるしかない。勿論、トイレに行くという事。


「やっぱり、トイレを我慢してたのか。私もついて行こうか? 一緒に見れば恥ずかしくない」


「ないわけないでしょ!!」


 トイレを我慢しているのが分かっていて、水を薦めてきたのなら最悪なんだけど……って、あれ?


「……声が戻ってる」


「残念……元に戻るのは一瞬みたいだね。もっと凄いのを期待したけど」


 紗季の残念という言葉はともかく、私が元の姿に戻った事は間違いないらしい。時間としては……二時間。栄養ドリンクの【変身】持続時間は二時間っぽい。


「そんな事よりも!!」


 私はトイレに駆け込み、ギリギリセーフだった。

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