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番外編 花畑薫は回避する


 胃に穴が空きそうだ。母さんも挨拶なんかしなくても良かったのに。いや……あっちも俺達の存在に気付いていたからか。


 叶の言葉は俺が忘れ物をした事を教えてくれただけだが、そのせいで母さんが勘違いしたに違いない。【愚弟】に行った理由……叶達の後を追いかけたわけじゃないからな。


「生徒が色々と迷惑をかけたみたいでスミマセン。そして、助けても頂いたようでありがとうございます」


 鉄にも頭を下げられた。こういう所は素直に尊敬出来るところではあるが、早くここから解放して欲しい。【変身】解除の事もあるが、有野が近くにいるとなればビクビクしてしまう。出版社関連なら、読モの海野の可能性もあるが、鉄と叶が付き添いしたのなら有野一択だ。


「それとなんですが、花畑さん。今日は息子さんが休んでいたんですけど、何かありましたか?」


 それは聞かれるだろうとは思ったよ。俺が休んでいるのに、母さんは楽しそうに買い物してるからな。流石に俺がオバサンに【変身】していると素直に答える事は……


「一緒に」


「ゴホン!!」


 するのかよ!! 一緒に買い物に来た事が嬉しいのは分かるけど!! 


「昨日の夜、私の仕事の裏方を途中まで手伝ってくれたんです。今朝の新聞配達も行って……疲れが溜まっていたのか、私が帰った時には寝ていて……起こせなかったんですよ」


「そうなんですか。花畑さんの仕事を手伝って……それに加えて、バイトを二つしてましたよね」


 そういえば、俺に対する色んな噂が流れたせいで、鉄と母さん、三人で話す機会があったな。その時に事情を説明したか。


「はい。家計の足しにもしてくれています。なので、今日休んだのは私のせいでもあるので、申し訳ないです。こんな風に出掛けるのも、薫が良いと言ってくれたからです」


「病気じゃなくて良かったです。彼女は双子の姉妹……なんですか?」


 そうなるよな。【変身】した姿は母さんに似てるし、同じ服を着てるから。けど……母さんは頼れる家族とか、親戚はいないと言った事があるのを鉄なら覚えてそうだぞ。


「そう見えます!! 実は」


 この流れは言ってしまう。男が能力者だと知られるのはマズイ。鉄は能力を研究している小鳥遊と知り合いだし、叶が有野に言うかもしれない。


「【分身】です。能力で二人に分かれてるんです。性格や姿も食べ物によって、ほんの少し違うようになるんですよ」


 咄嗟に出たのが【分身】。俺自身が能力者だから、思い付いた案だ。小鳥遊の知り合いでも、鉄や叶が深く追及してくる事はないはずだ。


 それなのに、叶はどういう事がその答えに満足そうな顔をしているのは何故だ?


「もう……恥ずかしいけど、そういう事なんです。誰かと一緒に買い物に行く機会が無くて」


 母さんは少し怒った感じにはなったけど、話を合わせてくれた。


「なるほど……花畑さんは能力者になったんですね。それに関して、知り合いに研究者がいるので、知りたい事が出来たらおっしゃってください。では……」


 鉄は頭を下げて、去っていく。叶も後に続いて……何とかバレずに回避出来た!!

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