即刻の退場です
「さて……今回の事なのですが、勿論後羽先生の漫画が終わる事はありません。煤川に関しては迷惑を掛けたようですが、見る目は確かなんです。後羽先生が能力者の話を書きたいと聞き、ファンタジー向けから銅島よりも煤川だと……」
ん? 紗季は確かに能力者を使いたいとは思ってるけど、ファンタジーにするつもりはないんじゃないの? 【学遊日誌】の続き、二年生に進級してからの話のはず……
「そして、私達は四コマの月間誌ではなく、新しいファンタジーの月刊誌を半年後に創刊しようと思っています。有名な漫画家も手配済みで、【クローバー】の読者アンケートで常に三位以内に入ってる新鋭の後羽先生もその作品を出して貰えたらと……」
というか、紗季の【学遊日誌】が人気だと驚きなんだけど……常に雑誌の前の方にあるとは思ってたけど……
「勿論、そのためには来月に発売する単行本の売上次第ではあるのですが」
しかも、単行本が出るのも初耳なんだけど!! 違う雑誌に二つも描くなんて、人気漫画家の仲間入りじゃないの?
「そんな話になってたんだ。無理!! 新しい雑誌に描くのはお断り」
「「「えっ!!」」」
まさかの拒否させるとは思ってなかったみたいで、黒さんを含めた三人が驚きの表情を見せた。私もそこはビックリだわ。
「今でも〆切ギリギリで、色々指摘されてるのは黒さんが一番知ってるはずよね。【学遊日誌】を止めて、そっちを書くのも無理だから」
確かに紗季は【学遊日誌】だけで〆切ギリギリなのに、もう一作品は無理。出版社からアシスタントを増やす話もあったみたいだけど、断ってるのよね。私を使ったり、悟をアシスタントに引き入れたりするんだけどさ……
「有野さんが漫画を続ける事が出来るのは分かった。新しい雑誌に描く事に選ばれるのは凄いと思う。だが、本人は拒否している。親御さんにも学業優先と聞いていると思いますが?」
紗季が漫画を書けるのも、一人暮らし出来るのも条件を満たしてるから。運動音痴ではあるが、成績は上位の方にいたりする。
白先生も学校側として、紗季の両親に何か言われていたのかも。
「そもそも、私はファンタジーやバトルものを描きたいなんて一言も言ってないから。【学遊日誌】に能力者を出して、コメディに使いたいだけ。オッサンに【変身】したり、服が透けて見える【透視】とかね」
紗季が知ってる能力だけど、そこは具体的な能力は言わなくていいんじゃないの!?
「日常に増え出した能力を出せば、今であれば共感されもするし、批判されるかもしれません。ですが、浸透していき、読者だけじゃなく、全体に能力者の存在を知って貰えるかもしれません。取材をして、出すのを許して貰えたらですが」
小鳥遊先生も真面目な意見を……いや、その能力を自身も調べたいだけかもしれないか。
「なるほど……確かに【学遊日誌】に能力を使った方が更に人気が出る可能性がありますね。【クローバー】でアニメ化も……」
「アニメ化!!」
思わず声が出ちゃった。それで成功すればアニメ化……下手したら、私や蛍の醜態を全国に晒す事に……喜ばしい事だけど、嬉しくない。
「アニメ化はどうでもいいけど、取材は面倒だな……仕方ないけどさ。ファンタジーじゃなくなったから、担当は変更なしじゃないの? 取材も協力して欲しいから、黒さんの方が適してると思う」
紗季は酢男でも良いと言ってたけど、ジャンルが違うしね。もしくは、白先生と黒さんを一旦距離を取らせようとしたけど、それをなしにする形に?
「……分かりました。全てが私達の勘違いが起こした事。後羽先生は【学遊日誌】優先。担当も変更なしで銅島のままで。出来ればですが……学校を卒業した時、人気が続いていればもう一作品を」
酢男が登場したとともに退場。白先生と黒さんがいなければ続けられたかもしれないのに……なんて、そんな漫画みたいな話でもないか。
「それは考えておくわ。もう一つお願いしたい事があるんだけど、黒さん……銅島さんを【学遊日誌】のキャラとして登場させたんだけど?」
「それは別に構いませんが」
黒さんも許してくれたし、上司も頷いている。紗季はニヤったしたので、私は何となく察した。白先生は【学遊日誌】を読んでるし、漫画のキャラとして登場するのは決定している。【学遊日誌】でカップルにする事で意識させる作戦だ。