鉄白は鈍感である
私達は小鳥遊先生の車に乗って、【四葉】出版社へ。白先生はバイクで行くつもりだったけど、小鳥遊先生と紗季の押しに負けて、一緒に乗っている。これは白先生と黒さんの関係を追及するためでしょ。出版社に着くまでに時間はあるわけだし。
「それにしても、白もよくやりますね。出版社に行くのは校長や教頭でも良かったはずです」
小鳥遊先生の何気ない会話によるジャブね。白先生が出版社へ行く理由。紗季の担任というのが一番の理由なんだろうけど……
「私は有野の担任でもあるし、あちら側の対応を私がする事は、有野が漫画家になった時に決まってましたから」
ある意味、学校は白先生に面倒事を投げたんだと思うけど。今がまさにそんな感じだし……
「あの時は白先生が助け船を出してくれたからね。両親にも説得してくれたから、感謝してるよ」
「感謝してるわりには、色々と無茶してくるがな」
この事もあって、紗季は白先生を漫画のキャラにしなかったのかも。今後はお許しでも出たから遠慮なく使うはず。
「それも漫画のためだからね。白先生だけじゃなく、黒さんにもお世話になったよ」
「私だけでは説得は無理だったかもしれないな。有野の事で銅島さんには迷惑をかけっぱなしだったが、交替するのは残念でもあるな」
紗季も漫画家の端くれ。上手い構成で、黒さんの話に持っていく。これも小鳥遊先生と紗季の連携? 私も加わった方がいいのか?
「そういえば、黒さんに連絡入れてましたもんね。仲が良かったりするんですか?」
連絡先を交換するぐらいの仲だとは思っても間違いではないでしょ。紗季の担当が交替するのは残念だと言ってるわけだし。
「それはどうなんだ? 有野の漫画の件もあるから、月に一回は連絡をくれるな。食事に誘われた事もあるし、誕生日前にプロテインを貰ったが。それは仕事の関係上だろ?」
誕生日プレゼントにプロテインはどうかと思うけど、これは紗季の仕業かもしれない。黒さんは紗季に白先生の事を相談した可能性がある。紗季が白先生の誕生日を聞いた事があったのを覚えてるし。
「銅島さんはある意味で戦友だな。生徒も漫画家も育てるのは一緒で、同じ人物に苦労している」
「同じ人物と言ってる時点で私だろ!?」
戦友扱いされてる時点で、恋愛感情はなし? そもそも、黒さんの好意に気付いてない可能性も……白先生はよく恋人募集中だとネタにしてるけど、実は鈍いだけなのでは?
「誰に苦労しているかは別として、一緒の気持ちになれなくなり残念とは思っているんですよね? その人が付き合って欲しいと言ってきたらどうですか?」
小鳥遊先生は黒さん本人でもなく、全く関係ないのにドストレートな言葉を投げた。これも先輩後輩だから出来る事なわけ?
「銅島さんが私に告白……それはないですよ。好きな人がいると言ってましたから。自分よりも男らしく、同じ目線でいてくれるとか……年齢は年下らしいですけど」
「銅島さんの年齢は?」
「確か……小夜先輩と同じです」
その時の状況は分からないけど、明らかに白先生の事を言ってると思うんだけど!? 白先生は男よりも男らしいし、同じ視線は紗季の事を言ってるよね。更に年下というのも当てはまるし……
「遠回しな言葉は流石に無理でしょ」
紗季はその出来事を黒さんから聞いてたのかもしれない。