警察にご厄介ですか?
「あの……紗季……じゃなくて、後羽先生のファンだったら、学校を訪ねてくるのは迷惑だと思うよ。学校で問題を起こせば、漫画を書けなくなってもおかしくないから」
今の時点でも学校に迷惑かけてるわけで、紗季としてはありがた迷惑だと思う。私もとばっちりを受けてるし。
「叶の言う通りだ。お前の行為は有野の足を引っ張ってるだけ。学校が協力的というのも何処から聞いたのやら」
白先生はスマホを取り出し、何処かに電話しようとしている。残念ながら、この男は逮捕の流れだな。ある意味、紗季の漫画のネタになったかもしれないけど……
「ふ、ファンじゃないっすよ!! 自分はこういう者っす。後羽先生の担当者っす」
っす、っす、っすと五月蝿いんで、酢男でも名付けようか。その酢男は白先生に名刺を渡した。
「有野の担当? 担当は彼だったはず……出版社は同じか。煤川鈴という名前だな」
名前も【す】が多いし、私の中で酢男決定だ。
「紗季から担当が替わる事は聞いてますね。放課後に会う約束はしてるみたいだし。その中に私も含まれるんだけど……」
紗季と合った破天荒な人とは聞いたけど、学校の盗撮、不法侵入は明らかにライン超えでしょ。
「なるほどな。有野の新しい担当がお前という事か」
「そうっす、そうっす!! 本当は先輩と一緒に後羽先生の家に行く事になってたんすけど、その前に漫画の舞台を見て、勉強しようと思ったんすよ」
酢男は何度も頷いている。キャラなら分かるけど、学校自体は何処も変わらないと思うけど……発言がいかにも怪しいでしょ。
白先生もそう思ったのか、電話するのを止めなかった。
「ちょっ!! 自分は怪しくないっす。警察は勘弁すよ」
酢男も自分の行動が怪しいとようやく自覚したみたいだけど、警察のご厄介に……
「そんな事はしないぞ。有野の漫画に影響するかもしれないからな。連絡してるのは有野の担当編集者だ。本当に煤川という男が社員なのかを確認するためにな」
学校じゃなく、白先生は前担当のオジサンとは連絡を交換してたんだ!? その方が驚きなんだけど……
「……スミマセン、こんな朝早くから。有野の事なんですが、担当者が交替するのは事実ですか? それも煤川という男性でしょうか」
電話はすぐに繋がったみたいで、白先生は酢男の事を聞いている。
「はい……はい……分かりました。本当みたいだな。放課後、担当者がお前と一緒に謝りに行くとさ。そっちに連絡すると言っていたぞ」
白先生の言葉通り、酢男のスマホに着信が鳴った。酢男はそれに出ると、すぐに耳からスマホを遠ざけた。相手が大声で怒ったんだろうと分かるけど、そんな行動をする奴なんて漫画以外で初めてみたわ。
「叶には悪いが、有野に放課後、職員室に来るように言ってくれないか? 寝坊したまま、学校に来ない可能性もあるからな。この件は有野にも関係するだろ? 勿論、叶にも付き合ってもらうぞ」
昨日よりも朝からヘビーな出来事に巻き込まれたんだけど……これは花畑君にかまってる暇はないかも……