不審者がいます!!
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「ふぅ……今日は小鳥遊先生の突撃訪問がなくて良かった。昨日は紗季の家に泊まるか悩んだぐらいだし」
一度ある事は二度ある。連日、小鳥遊先生が家に訪問に来るのでは? と疑ったけど、別の能力者の生徒の方に行ったのかもしれない。
「新しい担当が来るんだから、少しは部屋の掃除をしてればいいんだけど……」
紗季の家に泊まらなかったのは部屋の掃除とか、新しい担当に会う準備とかを手伝う……やらされそうだから。紗季の家は今も散らかったままな気がする。
今日は昨日とは違い、いつもの時間に【疾風怒濤】で自転車登校。オッサンに【変身】してないから、蛍に警戒しなくてもいいから気楽だ。
オッサンに【変身】する能力を持ってからか、アニメやゲームでもないのに、色んなイベントが起こり過ぎ。漫画家と友達だからって、そんな起こるはずもないのに……
「蛍と悟は別行動になるだろうし、花畑君の事は……紗季に任せよう。いつもの事といえば、そうなんだろうけど」
花畑君に朝から突撃すると紗季は言ってたんだけど、【ライソ】を送っても未読のまま。寝坊して、遅刻するのが目に見えてる。変に私だけで声を掛けるのもおかしな話だから。
「今日は何事もなく、平和に過ごせ……」
学校に到着する前……というか、校門前。白先生とカメラを手にした怪しげな男が対峙してるんだけど……
白先生は生徒達をその男から距離を取らせ、さっさと中に入るような仕草をしてる。
「勝手に学校の中へ入ろうとするな。不法侵入で警察の厄介になるぞ。生徒達から学校周りをカメラを持った怪しい男がうろちょろしてると聞いたが、カメラの中身が何なのか答えてもらおうか」
白先生が男に対して、問い質す声が聞こえてくる。カメラは持ってるけど、凶器らしい物はなさそうだから、少しは安心だけど……
「何……不審者? 蛍のストーカーとか?」
カメラを持ってるのは学校を撮るというより、生徒を撮るためなら、考えられるのは蛍なのよね。
「自分は全然怪しくないっす。先生に挨拶しに来ただけで、写真は学校の風景だけっすよ。人を撮る時は、きちんとその一人に声を掛けるっす。貴女は漫画に出てきてもおかしくないキャラっす!! 撮ってもいいですか?」
このタイミングで、白先生を写真に撮ろうとするとか、どんな頭をしてるんだろう? 蛍の線が無くなったとすれば、来たばかりの小鳥遊先生? 白先生は絶対ないわ。OBだとしても、訪ねられた先生ははた迷惑でしかないも思うけど……
「駄目に決まってるだろ。その先生の名前を言ってみろ。確認して、誰もお前の事を知らなかった時は」
白先生は相手に圧をかけてるけど、私は触らぬ神に祟りなし。他の生徒達同様、その二人から離れている。巻き込まれたくなんか絶対ないし……
「後羽先生っす!!」
「後羽? そんな教師はこの学校にはいないぞ。嘘を吐いたみたいだ……」
白先生が途中で言葉を区切ったみたいに、私も思わず足を止めてしまった。教師ではないけど、私もその名前に覚えがあったから。
「教師じゃないっすよ。漫画家の先生っす。後羽無視先生。【学遊日誌】の作者っす。学校は協力的だと聞いたんすけど……」
後羽無視は紗季のペンネーム。【学遊日誌】は描いてる漫画の名前だ。つまり、この人物は紗季の漫画のオタク……じゃなくて
「叶!! 有野と連絡はつくか」
「えっ!? 【ライソ】の既読もないから、まだ寝てると思いますけど」
白先生が私が通り過ぎようとしてたのに気付いていて、引き留めた。
待って……この流れは紗季の代わりに巻き込まれるのでは?