番外編 花畑薫のオーラ力
「知り合いだったの? なら、彼女と一緒に写真を取っても構わないかしら?」
海野と井上と一緒にモデル!? 俺が見ても凄いと思うのに、この二人に加われと……
「良いですよ。助けて貰ったお礼も兼ねて。写真映えもするでしょうし」
お礼と言われても……俺はモデルをするとは一言も言ってないんだが……
「海野さんがOKするのなら私も……それにしても……美人ですね。海野さんみたいに男装が似合いそう」
井上さんには反対して欲しかったが、ここで時間を取られて、【変身】が解けたら最悪だ。
「……仕方ありません。それなら、私だけじゃなく、彼女達も」
俺だけじゃなく、有野や叶も巻き込まないとやってられない。それを見るためにこの場所に侵入したんだからな。
「いや……私達はモデルに誘われてないんで」
「付き添いで来ただけだから。私達の事は気にしないでいいから。写真も撮らないし、絵も書かないから安心して」
譲る事を気にしているのではなくて!! コスプレするつもりは未然もないのか……というか、アイツは本当に有野か? 写真も撮らなければ、絵も描かないなんて。
「ほらほら!! 紗季ちゃん達もそう言ってるんだから、貴女も気にしないで。貴女のコスプレは私が選んでもいいかしら? それとも着たいのは決まってるの?」
俺がコスプレするのは避けられないみたいだ。こんなに多くの衣裳の中から決めるのは難しい。好きなキャラクターなんて……
「それじゃ……あれで」
指差したのは【妖怪の森】のウサニンの着ぐるみ。まさか、妖怪になれるとは……少し嬉しいかもしれない。顔も隠れるし、一石二鳥だ。
「却下よ」
「空気を読んでください」
「それは駄目ですよ」
「薫じゃないんだから」
「……着ぐるみは流石にね」
全員が拒否!? 冷めた視線を送るのは止めてくれ。有野も何気に俺の名前を口にして、ドキッとしたぞ。『バレたか!?』と思うし、俺が可愛い物好きだと思われるだろ!!
「【妖怪の森】……可愛い物好きなのは悪くないのよ。ギャップもあるから、むしろ良いと思うの。けど、貴女の顔やスタイルが隠れるのは勿体ないわ。着ぐるみなら、彼女達でも着る事が出来るもの」
「何気に私達をディスってない?」
叶は店長に言ってみるけど、その言葉を無視して、話を続ける。
「ウサニンの着ぐるみは報酬として貴女にあげるわ。だから、私に決めさせて。悪いようにはしないわ。彼女達の服も私が選んだんだから」
「はい」
ウサニンの着ぐるみが手に入るからって、即答してしまった。海野や井上のコスプレを見る限り、悪いようにはならないはず。
「私は海野さんみたいに男装が似合ってると思います」
「悟も私を呼ぶ時は蛍でいいから。私も彼女には男装が合ってる気が……名前を聞いた方がいいですか? 貴女や彼女ばかりだと失礼だったりは」
「いえ……そこは大丈夫です」
別の名前を考えるのは難しい。呼ばれた時に反応出来なかった時、有野が怪しく思うかもしれない。奴は変に勘が鋭いから。
「チッチッチッ……蛍は分かってない。彼女が本当に着たいのは男装じゃない。似合うのは分かるが、ここに来たのは【変身】願望があるからだ。つまり!! 可愛い系。ウサニンの着ぐるみを選んだ人だぞ」
有野が前に出てくるから驚いた。否定するところがそこなのか? と思いはしたが、こんな事を言う時点で有野は偽者ではないみたいだ。
「分かるわ!! 紗季ちゃんの言う通り、貴女からはそんなオーラが出てる。素直な気持ちを出させるコスプレにしてあげるわ」
有野と店長が同調してるけど、オーラとか意味が分からないぞ。有野の漫画でも男なのにヒロイン扱いされてるし。
「男の服でいいです。そこまで時間もないから」
井上のコスプレを見る限り、着るのに時間が掛かりそう……じゃなくて、着たい気持ちはない!! 途中で【変身】が解けたら大惨事だ。
「そうなの!! なら、急いで着替えないと。貴女は化粧はしなくても大丈夫そうだから、きっと間に合うわ」
俺は再び店長の力技によって扉の奥に連れて行かれて……