蛍は諦める
「良いんじゃないの? 蛍は読モ経験者だしさ。ここのコスプレのクオリティ高いから、作ってもらった方が得だから。悟のコスプレ姿も見たいし」
蛍と悟じゃなく、無関係の紗季が答えた。確かに蛍の目的を考えたら、店長に協力するのが一番良い方法なんだね。店のコスプレを見た時、私でも着てみたいかもと思ったぐらいだから……
「わ、私で良ければ……どんなコスプレになるか分からないけど、嬉しいかも」
興味がある悟なら尚更、着てみたいと思ったはず。モデルとしてなら、店長が似合った物を選ぶはずだろうし……
「……私も服のレベルの高いって事ぐらい分かるから。コスプレを作ってもらった方がいいとは思うけど……」
モデル経験者の蛍から見ても、コスプレ服はレベルが高く見えるみたい。
「決定ね!! 貴女達に一番似合うコスプレをチョイスしてあげる」
店長は蛍と悟の腕を掴み、奥にある扉の向こうに引き摺り、連れて行こうとする。見方によっては犯罪だわ。
「ちょっと……店長は男よね。店長が持ってきたコスプレを私達で着替えますから」
どう見ても男だから!! ……じゃなくて、男性に着替えを手助けしてもらうには蛍には抵抗があるかもしれない。
「大丈夫。私はオネエだし、プロでもあるから。そんなやらしい風に思わないでよね。モデル経験したのなら分かるんじゃない? 着る工程が難しいのもあるのよ」
確かに店長の言う通りかも。アニメとかで見ても、この服はどうやって着たの? と思うのもあって、素人の蛍達が着るのは難しいんでしょ。
「それを言われると……男性のスタイリストはいるけど……悟は良いの? 男性に着替えを手伝って貰う事になるわよ」
悟というより、蛍の方が抵抗があるのかも。店長があんな姿で、オネエだとしても一応男なわけだから。
「私は全然。能力で男の……見てしまう時もあるから。その申し訳なさで逆に見られても文句は言えないからなって……そこまで無理矢理なわけでもないから」
蛍が悟に同調を求めるのは失敗。悟はある意味で見てしまう側だから、見られる事に抵抗がそこまでないのかも。
「はぁ……分かったわよ。極力、私は一人で着替えるので」
蛍は悟がOKを出した時点で諦めたみたい。悟と二人で着替えるんだから、危ない事はないと思うけど……
そして、店長と蛍、悟は店の奥にある扉の中へ……
「えっ!? ちょっと……これを私が着るの!? だって……これは……私が求めてたのとは」
「貴女に一番似合うのはこれ。私が保証する」
「私も海野さんに似合うと思う!!魅力が倍増するかも」
扉の奥ながら、三人の声が漏れてくる。蛍は乗り気じゃなく、店長と悟が推してるみたいだけど……
「もしかして……エロいコスプレを蛍に着てもらうつもりかな。紗季はどう思う?」
「それなら胸のデカイ悟を選ぶだろ? 蛍なら完全に拒否する……いや、オッサンのためなら着るか?」
紗季はどんなコスプレでも写真に残すため、スマホを準備している。
「止めてよ……オッサンの時に遭遇したら、どんな反応すれはいいか滅茶苦茶困るから」