オッサン>屁?
「蛍を助ける事が出来たのは本当に良かった……じゃないのよ!!」
本来の目的は【サクラサク】のエロ本を手に入れる事なのに、チャラ男達のせいで失敗に終わった。もう一度【変身】出来るか試すのもありだけど、あの二人組だけでなく、蛍に再会するのもちょっと……
「本屋は本当に少なくなったのよね」
最近では、紙媒体よりも電子書籍がメインにもなってきてる。電子書籍しかない漫画や小説もあるぐらいだし。けど、私にとっては紙が一番。電子書籍には……私の好きな作品がなかなか置いてないから。
「はぁ……【疾風怒濤】の場所に戻らないと。買い物の続きをする気力もゼロだわ」
路地を入ってきた反対方向から出てみると、さっきのチャラ男二人組と遭遇。今度は私がナンパされる側に……なるわけがなく、素通りされるなんて当たり前か……
「さっきの奴こそ、あのオッサンの娘じゃないのかよ。全然似てなかったよな」
チャラ男Bからそんな声が聞こえてきた。あながち間違ってないんだけど、複雑な気持ちになるわ。似てるところなんて、同じジャージを着てるぐらいなんだけど。
「蛍に見つかる前に、さっさと駅前から離れないと」
チャラ男達が言った言葉のせいで、蛍と見つかるのは……私とオッサンが同じジャージを着てるわけだし、変に勘づかれるのも……まぁ、蛍も助けたオッサンの事なんて、すぐに忘れるだろうけど……
それにしても、私以外で能力を持った女の子を見かけないわね。全国各地にいるとはニュースやSNSで分かったけど、そこまでの数がいない?
私自身、能力が分かったのは偶然だし、乙女座流星群の光に当たったとしても、見つける事もそうだし、使い方も分からないだけかも。
「私みたいに知られたくない能力だった……なんて事もあるかもね」
オッサンに【変身】する以上に嫌な能力はある?
そんな時、一陣の風が吹き荒れる。それはバイク……いや、それと同じくらいの速さで走る自転車が、【疾風怒濤】を追い越していく。去った後には、黄色空気上の物が……そこはかとなく臭い。
その自転車に乗っていた彼女はサングラス、マスク、帽子と完全に身元がバレないようにしていた。そして、片手にはさつまいも……焼き芋が見えたような……
「あれよりはまし……なのか?」
あれは……屁をブーストとして使ってるのなら、正体は知られたくないだろうなぁ。けど、時間短縮の有効活用出来てるわけで……オッサンに【変身】しても、エロ本を行こうとした……じゃなくて、蛍を助ける力になったからね。