オッサン達は見た
「予想外の結果になったけど、蛍は無事に助ける事が出来たからOKとするか」
落ち込んでいるナンパ男は自業自得だから無視して、猫みたいに路地の狭い場所で身を隠した。逆に行った蛍対策じゃなくて、私自身が怪しい奴全開だから。お面ライダーのお面を外して、白衣も脱ぐ。自転車は……小鳥遊先生と合流してから折り畳もう。
「ふぅ……これで普通のサラリーマンに見えるはず。小鳥遊先生に連絡する前にコンビニでも寄ろうかな」
オッサンに【変身】したせいで朝御飯を食べる前に出てきたから、お腹が空いた。それも小鳥遊先生のせいだから、奢って欲しいぐらいだ。
オッサンでもコンビニに寄るぐらいは普通だし。学生もチラホラ見掛けるけど、別の学校の制服。私が通う学校の通学路とは少し離れた場所だから、多分大丈夫でしょ。
「それに【変身】してる状態だし、時間も一時間はあるわけだから」
スルメと栄養ドリンクで【変身】するのは分かったけど、他でも【変身】する可能性は残ってる。外で食べるのは少しは控えてるけど、すでにオッサンになってるのだから、気にしなくてもいいはず。
「おっ……あったあった。すでに先客のオッサン達が」
コンビニを発見。オッサン二、三人がイートインで弁当やパスを食べながら、新聞を読んだり、PCを触ってる。コーヒーを飲んでるオッサンも。この中に入れば、目立つ事はまずないな。
「結構お腹が空いてるんだよね……オッサンに紛れ込めば恥ずかしくない」
私が選んだのはおにぎりやパン、ホットスナックじゃなく、カップラーメン。所謂、朝ラーだ。
朝からコンビニでカップラーメンを食う女子なんかいるだろうか……オッサンだから問題ない!!
流石に豚骨やカレー味ではなく、塩味をチョイス。硬麺派や柔麺派で言えば、私は柔麺派。三分のところを五分は待つ。その間に小鳥遊先生に居場所を連絡しておこう。
「おっ……悟から【ライソ】の返事が……」
それだけじゃなく、蛍からも【ライソ】が来てるんだけど……タイミング的に、オッサンと再会した事よね。一文目の運命的というので想像出来るわ。
「……これは後にしよう」
これを見たら、胃がキリキリしてラーメンどころじゃなくなるかもしれない。すでに数少ないバーコードの髪が薄くなっているのでは? と思うぐらいにストレスがあるかも。
「そろそろ良いかな。朝ラーの背徳感で【ライソ】の事は忘れよう」
ちょっと伸びた塩ラーメン。先に軽くスープを口にして、麺を啜る。オッサンだから豪快にいったり、音を立てる事も気にしない。それが更にラーメンを美味しくさせる。
「……ん?」
何か視線が……と思ったら、オッサン達が私を見てる? 一人は新聞を広げたまま固まっているし、一人はコーヒーをゴボゴボとズボンに溢れているし、一人は逃げ出す始末。
「一体何だって言うのよ。そこまで汚い食べ方なんてしてないのに……!!」
オッサン達が驚くの仕方ない。私自身も驚いたわ。窓の光の反射で見えたのは【変身】が解けた私の姿なんだから。