ヒーロー誕生?
「助けに行くのですか?」
その言い方は小鳥遊先生は助けに行かないの!! 先生というよりも研究者側で、蛍が自分を嫌ってそうだから?
「えっと……」
助けたい気持ちはある。蛍も小鳥遊先生に手伝わされる事に心配してくれたわけだし。けど、オッサンの状態で助けに行くと、蛍から逃げられるかどうか……どっちを選ぶべきか……
小鳥遊先生は再度車を出発させる。早く答えを出さなかったから……ってわけじゃなく、近くの駐車場に移動しただけ。路駐を止めただけだった。
「トランクに折り畳み自転車があります。それと……これが必要であれば」
折り畳み自転車は蛍を助けた後の離脱用? それと小鳥遊先生が渡そうとしてる袋はナンパ男対策の武器……
「じゃない!! えっ……意味が分からないんですけど。何でこんな物持ってるんですか?」
袋の中に入っていたのは色んなマスク、お面。プロレスラーが被ってそうなのとか、祭の時に屋台に売ってる物と様々。
「能力の調査をする際、顔見せを拒否する人達もいるので、こんな物を用意してるんです。現実でモザイクはかけられませんし、出張で調べに行く時もありますから」
学校でそれを用意してなかったのは健康診断の一環だから? いや……こんなのを被りたいと思う女子なんて滅多にいない。屁でブーストする彼女なら必要かもしれないけど……
「あっ……大丈夫です。きちんと洗ってますから。ヒーローになれるチャンスです」
「そういう問題でもないんだけど……マスクを被った男なんて、ナンパ男よりも怖いでしょ」
小鳥遊先生が能力の調査をするのはヒーローとかが好きだから?
それは置いといて……マスクを被って、怪しい人物だと警察を呼ばれたら大問題。蛍もどう思うか……ん? 声を出してオッサンだとバレたとして、マスクをする怪しい趣味に幻滅するんじゃないの?
「けど、蛍を助けるためだから……これを借りますね」
私が手にしたのは改造人間お面ライダーのマスク。何十年も続くお面ライダーシリーズの初代。オッサン世代なら、これだと思うし。
「良い選択をしますね。ついでに【ライソ】を交換しておきましょう。上手く逃げる事が出来た後、そこまで迎えに行きますから」
蛍救出後は彼女自身を撒いて、学校に行かないと駄目だし、鞄も小鳥遊先生の車に置いた状態になるわけで……渋々、【ライソ】を交換。
小鳥遊先生がトランクを開け、折り畳み自転車を組み立ててる間に、蛍がナンパ男を上手く回避出来てたら……と思ったけど、先に進んでも諦めずにナンパ男を付きまとっているわけで……
「はぁ……思った通りになればいいんだけど」
ナンパ男から蛍を助けながらも、マスク姿に呆れさせ、恋心を消してしまう作戦。
「行きなさい、お面ライダー。ついでにマント代わりに白衣も貸してあげます」
小鳥遊先生はヒーローの司令官みたいな事を言い、私は自転車を漕ぎ出した。