学校は休めません
「それだけで学校を休むのは無しね。遅刻するにしても、先生から学校に説明して貰えばいいのよ」
そんな面倒な事になるのなら、お母さんも小鳥遊先生の行動を止めてくれたら良かったのに。コーヒーに栄養ドリンクを入れたところを絶対見てたでしょ。
「私のせいでもありますし、担任の白には伝えておきます。遅刻もなしで。能力に関する協力は重要なので、学校も許してくれるはず」
はず……って、確定じゃないのかよ!? 白先生も小鳥遊先生の面倒を見るのはしんどいかも。
「はぁ……私も悟に【ライソ】で連絡しておこう】
【ライソ】は連絡アプリの一つ。悟の【ライソ】は昨日の内に交換済み。紗季に連絡したら、余計に面倒な事になるのは目に見えてる。悟から紗季に連絡が行った方が良いはず。
「とはいえ、【変身】が解けた後で学校に向かっても、時間が勿体ないですね。私が車で学校まで送りましょう。保健室にでも隠れてたら大丈夫でしょう」
「いやいや……全然大丈夫じゃないから!! 制服は? オッサンのままで着るのは無理でしょ。持っていくとしても、ダボシャツのままで行くのも嫌だし」
最初から制服を着た状態であれば、ヨレヨレのスーツに変わってたかもしれないが、今はダボシャツ、ダボパンだ。制服でなくとも、女物の服を着るのはアウト。それに元に戻った時、その服が変化するかもしれないのはちょっと……
「それなら、少し大きいかもだけど、お父さんの服を着ていけばいいわ」
「学校に入る前に白衣も貸してあげるから十分だと思いますよ」
お父さんのスーツと白衣。小鳥遊先生と一緒なら、保健室まで行けるかも?
「……そうするしかないでしょ。なら、みんなが来る前に出発しないと。白衣を着てても、目撃者は少ない方がいいんだから。小鳥遊先生も変な噂が出るかも……」
オッサンと一緒に通勤すれば、彼氏と勘違いされるかも。小鳥遊先生もそんな風に思われたくはないだろうし……
「って、何かそんな風な話をしたような……」
そうだ!! オッサンになった時の偽彼女だ。紗季曰く、花畑君に似た女性を見つけて、頼むつもりだったけど、小鳥遊先生だったら……車で出勤する場面を蛍が見たら、どうなるか……諦める? いや……小鳥遊先生相手でも問い質す気がする。
それが私のいない時で、小鳥遊先生は蛍に正体をバラすかもしれないし、彼女がいない事も言ってしまうかも。なんせ、正体が私だって知ってるんだから。
「何か問題でも? 早めに出発しなくてもいいなら、もう少し体を調べ……」
「てる暇はないです。ほた……紗季達が来る前……いち早く向かいましょう」