早朝から訪問とか迷惑でしかない
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「陣~、お迎えが来てるけど、中に入って貰った方がいいの?」
早朝七時。まだ家を出るには早い時間。というか、まだ寝てたい時間なんだけど。
「誰~……こんな時間に来る知り合いなんていないんだけど」
欠伸をしながら、寝間着のまま部屋を出る。まだ頭が回ってないんだから仕方がない。
「どうせ、来てるのは紗季でしょ。いつもは起きるのは遅いくせに用事がある時は早いんだから。昨日、バイトに来た時に……」
「お邪魔しています。朝早くからすみません。紗季という子ではなく、小鳥遊です」
「……へっ?」
私の体はお腹を掻きながら一時停止……硬直してしまった。小鳥遊先生がテーブルでお茶を飲んでいる。瞬きを何度しても、その姿は消えてくれない。
「ちょっと……意味が分からないんだけど?」
「学校内で能力を見せて貰うのは無理だと思って、来てしまいました。一番先に確認しておきたかったので」
やっぱり、小鳥遊先生は紗季に似てる部分があるわ。自分の欲望に忠実。人の迷惑を省みず、自身の研究のために、早朝から私の家を訪ねてきたわけだ。
「先生、能力とは何の事ですか? もしかして、ニュースにもなった流星による謎の現象が、陣にも……」
「あっ……両親にも話してなかったんですね」
お母さんにも内緒にしていたのに、小鳥遊先生の話でバレてしまった。オッサンに【変身】するなんて、親に言いにくいに決まってるじゃない。
「はぁ……お母さんの言った通り、流星の光を受けて、能力を手に入れたの。それもオッサンに【変身】するだけで」
「オッサン!? あの時、変な声がしたのも、それが原因? それにしても微妙な能力を手に入れたわね。性別だけなら良かったのに。男になりたいと思った事も何回かあったから」
そこまで驚いてない!? 普通に受け入れてるんだけど……
「そんなのでいいの? 娘がオッサンになるんだよ。体の異常とか心配しない?」
「なったのは仕方ないでしょ? まだ分からない事ばかりだと思うから。先生もそれの調査で来たわけですよね? まぁ……お父さんには内緒にしておいた方がいいかも。流石に娘がオッサンになったら卒倒するわ」
お父さんは私を溺愛してるわけじゃないけど、流石に娘がオッサンになったらショックだろうね。
「陣子さんには協力してもらって、能力の解明、消去の方法等を研究していきますので」
小鳥遊先生はお母さんに頭を下げた。これは断りづらいし、家に来た時点で私が協力すると言ったと、お母さんは思ってるかもしれない。
「まずは【変身】を見せて貰いたいと……スルメは用意しました。解除方法、もしくは時間を伸ばす方法があれば、教えて欲しいのですが」
「スルメって……陣らしいと言えば、陣らしいけど、オッサンに【変身】するのも納得してしまうわ。私も【変身】した姿を見せて貰ってもいい?」
「えっ……娘がオッサンになる姿が見たいとか、止めて欲しいんだけど」
拒否したところで、お母さんと小鳥遊先生から逃れる事は出来ず……