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店長大感激

「あまり花畑君を弄らない方がいいと思うけど……紗季に何か言われただけで動揺しそうだし。スマホのカメラで彼女を撮ってないなら、判断する材料がないでしょ。蛍がオッサンの写真を撮れてないのと一緒よ」


「そこのところは絵を描かせて貰ったから大丈夫だぞ。どんなのか見てみるか?」


 紗季は常日頃からスケッチブックを持ち歩いている。それが居酒屋でも変わらない。スマホで写真を撮れなかった場合だけじゃなく、描く事が好きなんだと思う。


「絵……って、紗季の漫画を誰がアシスタントしてると思ってるのよ。見慣れすぎてるぐらいだから。あれで判断されるのは酷じゃないの?」


 紗季からスケッチブックを渡される。店長がこっちをチラチラと見てくるのはファンなら当然かもしれない。


「うまっ!! えっ? どういう事」


 紗季の四コマ漫画は私や蛍、花畑君をモデルにしたキャラでも、そこまでリアルな絵じゃない。ゆるキャラみたいな感じで描かれてるんだけど、このスケッチブックの中身は凄い。写真みたいに似顔絵が描かれてるんだけど!?


「美術の授業の絵とか全然だったでしょ」


「それは適当だからね。真剣に描けばこんなもんよ。逆に四コマでこの絵は……ある意味面白いかもだけど、濃すぎるでしょ」


 確かに……モデルになった私達も嫌だわ。クスッとした笑いが、シュールな笑いになってしまう。たまにリアルな顔にするならありかもしれないけど。


「蛍は嫌がりそうだね。まぁ……これなら分かるかもしれないけど。店長、この人が店に来た事ある?」


 店長はスケッチブックの中身を気にしていたし、見せてあげよう。紗季も店長なら構わないと、止める様子もないし。


「おおっ……その人は見た事がないが、羨ましい。私も描いて欲しいのに」


 店長はポロっと口に出た。愛読者なんだから、描いて欲しいと思うのも悪くない。紗季が来るたびに、店長はサービスしてるわけでし。とはいえ……


「ああ……実はすでに漫画に出てるんだよね。居酒屋の店長じゃなく、ラーメン屋の店長として。常に後ろ向きの姿だから分からないだろうけど。その姿を見る事が多かったし」


 そうなんだよね。漫画に登場する行きつけのラーメン屋の店長のモデルだったりする。後ろ姿だけで、会話なし。風景と化してるんだけど、間違いない。自分の後ろ姿は分からないから……


「本当ですよ。タオル型バンダナとか黒のユニフォームとかもそうでしょ」


「確かに!! まさか漫画の中に登場しているとは」


 店長は嬉しそうだ。勝手にモデルにした事も怒ってない。実はモブキャラみたいなのは、店長みたいに黙って使ってる事が多いのを、私は知っている。家の近所のオバサン連中もそうだ。


「何処かの話で、正面向きの店長に台詞を入れとく。いつもサービスしてくれる御礼で。それとも、漫画のキャラで良いなら、今描いた方がいい?」


 その言葉に店長は、紗季の前に焼き鳥の盛り合わせを置いた。それはお願いしますという意味でしょうね。


 途中から話は脱線したまま、今日一日は終わってしまった。

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