ある意味、パパ活かもしれない。
「ねぇ、ねぇ……一緒に遊びに行こうよ」
「一人でいるよりも楽しいと思うよ」
チャラ男二人組がオッサンになった私をナンパしてきたわけじゃないし、カツアゲしようとしたわけでもない。女の子一人をナンパしてただけ。スイカブックスへの道を塞いでいて、本当に邪魔。時間も勿体ないし、避ければ問題なかったはずなんだけど、その絡まれていた相手は私のよく知る人物だった。
海野蛍。私の親友の一人。スタイルが良く、読者モデル経験があるぐらいの美少女で、私とは全然違うタイプ。学校でも有名なんだけど、そんな彼女と仲良くなったのは……置いといて。
「や、やめてください!!」
蛍も流石に嫌がっているけど、周囲の人間は助ける素振りはなし。面倒な事には関わりたくない。それが知らない相手なら、私もそうするかもしれないけど……
「そんなに嫌がる事ないだろ?」
チャラ男Aが蛍の腕を掴もうとした時、私の腕を差し込んだ。
「あっ? オッサンが何の用だよ。俺達の邪魔をするのか」
そういえば、オッサンに【変身】したままだった。だからといって、強くなったわけではない事は、筋トレした時点で分かってる。
「こっちこそ、私の娘に何か用があるのかな?」
咄嗟に出た言葉がこれだ。オッサンが助けに入っても、ボコられる可能性は高い。けど、父親だったら? 流石に、チャラ男達も手を引く気がする。
その反面、蛍の協力も必要になる。下手したら、チャラ男達よりもヤバイ男だと蛍に思われるかもしれないか。そう考えると変な汗のせいで、加齢臭が出るかも……
「……お父さん」
蛍のその一言、その顔に、オッサンになっているせいか、私の心にズキュンと響いたんだけど!!
「チッ!! 父親と一緒だったのかよ。流石に誘うのはなしだわ」
「そんな可愛い娘と一緒に買い物するなら、もっとお洒落な格好しろよ」
チャラ男二人組は親子関係だと信じたようで、私と蛍から離れていく。まぁ……危ない関係と思われなかったのも、私がジャージ姿と生活感丸出しだった事もあるかもしれない。何故か、チャラ男Bに注意されるぐらいだし。
「はあ……念のために、私達もここから離れないと。そこで別れたらいいから」
チャラ男達から見えなくなるよう、曲がり角のある場所まで行こう。本当について来るかは分からないけど……
「あ、ありがとうございます」
チャラ男達に抵抗してたけど、後ろについて来てくれてる。蛍はちゃんと助けてくれたと思ってくれたみたい。
ジリリリリ……
こんな時に限って、目覚まし時計が鳴る。こんな時間に起きるなんて……変身が解ける三分前じゃないの!!
丁度、チャラ男二人組も視界から消えている。曲がり角を曲がった時、一気に離脱しよう。私がオッサンに【変身】してたなんて、蛍に思われたくない。
「ごめんね。電話が掛かってきたみたいだから」
「あっ……」
電話ではなく、目覚ましなんだけどね。私は蛍に振り返る事なく、人気の無さそうな場所まで走った。何か言い掛けてたような気もするけど……そこは諦めよう。
「ふぅ……周囲にこっちを見てる人は……いないわね」
またしても、店と店の狭い路地に隠れる。蛍も追いかけてくる事はしなかったみたい。声も途中から変わってきたから、本当にギリギリだった。