番外編 花畑薫と共通の趣味
★
放課後。
俺はさっさと教科書を手に入れ、バイトまでの時間を可愛いグッズ捜しやガキ達が現れない隠れガチャポンを回るつもりだった。
というのも、【妖怪の森】の続編。【妖怪と宇宙】が始まる。地球に入られなくなった妖怪達が宇宙へ旅立ち、宇宙人達との交流を描く話らしい。殆んどが~人なんだが、スライム人とかはキモカワよく、それを手に入れるのが今回の目標。
【妖怪と宇宙】の開始決定の応募者抽選で手に入れる月兎姫はヤバかった……それは流石にガチャにはない。手に入らず仕舞いだ。
「おおっ!! 丁度良いところにいたな。力ある物が欲しかったんだ。美化委員なのだから、片付けを少し手伝ってもらうぞ」
意気揚々と帰ろうとする俺の目の前に現れたのは竹刀を持った鉄。学祭実行委員の推薦を蹴り、美化委員を立候補した手前、『断らないだろうな』という圧を感じなくもない。
だが、俺にも予定がある。委員が本格的に始まるのは来週から。俺は上の奴にもNOと言える男。
「残念だけど、俺もバイトの時間が……」
思わず声を止めてしまった。鉄の持つ竹刀の持ち手の先にあるキーホルダー。
(月兎姫だと!! プレミア物だぞ。鉄も妖怪シリーズのファンか!!)
【妖怪の森】や【妖怪と宇宙】は子供向けアニメ。グッズだけなら女子も買うかもしれないが、男や女性が買うのはなかなかの勇気が必要となる。俺はウサニンやカメ老は隠しているのに、鉄は堂々と出しているのは凄い。
(もしかしたら……鉄とは話が合う!? 情報交換も可能? 何よりも大人になって同じ趣味を持つ同士の頼みだぞ)
「……あるから、それまでで良かったらな」
私利私欲で引き受けたわけじゃない。どう切り込むかも考えないと駄目だからな。
「勿論、それで構わないぞ。片付けというのも、能力検査の荷物を保健室に運ぶ事になる。まぁ……花畑には関係ない話だが、男の方がそういうのは欲しいところじゃないか?」
能力検査? そういえば、女子だけが能力検査を受ける事が出来たみたいだ。男が無理なのも身体検査がある場所でやってたからな。
「それは能力次第じゃないか? 不要な能力だと不幸になるだけだぞ」
オバサンになる能力は良い面もあるが、消せるとなれば、消すと思う。
「なんだ? 持っているような言い方だな? 男の能力者は小夜先輩にも聞いた事がないが……」
「いや……屁で加速する人を見た事があったからだ。その人も素顔を完全に隠してたからな」
「……確かに。あったら使うが……誰にもバレたくない能力だな。そういう事か」
危ない。能力者だとバレるところだった。そこは屁の能力者に感謝しかない。