紗季と似てる部分
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小鳥遊先生が食堂に来た理由。それは遅めの昼食を取っていたところに、丁度私達が来たみたいだ。一応、能力検査は放課後も続けるけど、場所を保健室に移動するみたい。そこで書類とか色んな道具も持っていくで、……いわば、引っ越しの手伝いみたいなものだけど……
「そんな力仕事を私に頼みますか? 人数がいた方が助かると思いますけど」
「そうですか? 彼女とのデートを避けたそうな顔をしていましたよ。それに能力検査の説明をちゃんとしたのは叶さんだけですから。他の人の名前も覚えてないのは必要でしょ?」
私以外の人の名前を覚えてないって……最初に来たから? 紗季の方が印象的だと思うけど、相手にするのが面倒だとか……
「後、あの時は言ってくれませんでしたが、叶さんの能力はスルメを食べると出てしまうんですか?」
聞き耳立てた事に怒るのはお門違いかもしれないけど、私があの場から逃げたい事を感じ取っただけじゃなく、スルメが【変身】する食べ物だと疑いを持つなんて。
私は周囲に紗季や蛍、他に誰もいない事を確認して、白状した。後からスルメを食べさせられたらアウトになるわけだから。
「はぁ……分かりました。黙っていて、すみません。小鳥遊先生の言う通り、スルメを食べると【変身】します。それも……オッサンに」
「やはり、そうですか。全身に光を受けたのなら【変身】かもとは思っていました。それも年だけじゃなく、性別の変化も加わるのは凄いですね」
小鳥遊先生は、そこは笑うのではなく、素直に感心している。それだけで、本当に能力についてだけを調べてるのが分かるわ。紗季も似たようなところがあるし……
「勿論誰にも言いませんよ。その代わり……誰もいない時に、私の目の前で【変身】してもらえませんか? 調査の一貫なので……」
それは言わない条件として、一度【変身】を見せろと言ってるようなものでしょ!! こういうところも紗季に似てるかも。
「……分かりました。一度だけですからね。学校でオッサンがいたら変に思われるだけなんだから」
「良かった。今日とはいうわけじゃないので、ご安心を。協力して貰う事に対して、情報を少し教えましょう。一応、叶さんを含めた学校にいる能力者は五人。これは公表してくれた生徒達です。他も何人かは調べに来てくれましたが、いるとすれば合わせて十人。事前調査で十人ぐらいと予想されています」
そんな事を私に言ってもいいんだろうか……というか、誰かに話したかっただけでは? この学校に私と悟以外に三人は確定で、他の五人は無自覚か調べに来ていない可能性もあると。
「本当に学校内に十人いれば凄い事で……だから、私が来たという事もあるんですけど」
その十人を調べた方法は教えてくれないだろうな。それに人数が多いからって、小鳥遊さんが来る事になったのは……研究のためか。