信用されていないだけ
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「はぁ……紗季のせいで散々な目にあったわ。学校の花形、学祭委員になるなんて」
LHRが終わった事で今日の授業は終わり、今は教科書を受け取るため、私達は食堂に向かってる最中。購買部は食堂の中にあって、食堂の席に大量の教科書が置いてる寸法だ。
「ハッハッハッ……私は最初からなるつもりだったけど、白先生が指名してくれたから、都合が良かったぞ。変に立候補すれば、反対されるだろうからさ」
紗季はそれを考慮してイタズラを……したわけじゃないな。変な笑い声を出す時はいつもそうだ。
まぁ……学祭で一番楽しいのは二年の時かもしれない。三年だと受験が控えてるし、一年は大体が展示や劇とか。屋台や喫茶店、お化け屋敷も二年が優遇されてたから。紗季のやる気が出るのも分からないでもない。
「……紗季と陣子が学祭実行委員なんて、白先生も冒険したわね。私の迷惑にならないようにしてよね」
後ろから声を掛けてきたのは蛍。五組も委員が決まって、教科書を取りに来たんだろうけど……
「迷惑って……蛍とは別の組だから関係ないだろ?」
「そうもいかないの。風紀委員に推薦されて、やる事になったから。問題を起こせば、違う組だろうと注意するわ」
蛍は真面目だから、風紀委員は合ってると思う。紗季に注意出来る存在でもあるわけだし。なにより……
「けど……あの人を捜しに行く時間が減るのも問題なのよ。風紀委員として、商店街に行くのもありだと思う?」
オッサン捜しの時間が減るのが嬉しい。協力関係になってるけど、私が一緒にいる時点で会えるわけないし。心苦しい面もある。
「……逆に怪しくなるから止めておいた方がいいと思うよ。オッサンに声を掛ける事もそうだし」
蛍には悪いけど、学校にいる時間を増やしてもらおう。万が一、私がオッサンになった時に、風紀委員の蛍が声を掛けたら駄目でしょ。
「そうなるわよね……って、誰!?」
蛍が驚いたのはいつもは私と紗季の二人でいる事が多いのに、今回は悟が一緒にいるから。とはいえ、有名人の蛍が、私達に声を掛けてきたに、悟自身も驚いてる様子だけど……
「ああ……紹介する。新キャラになってくれる井上悟。ついさっき友達になった」
「新キャラ……ちょっと!! 井上さんでしたね。紗季に弱味とか握られたとかじゃないの? そうなら、私が注意してあげても」
蛍が井上さんを心配するのは分かる。誰も好き好んで漫画のキャラになりたいわけじゃないし……
「だ、大丈夫。自分の意志で漫画のキャラになってもいいと言ったから。紗季達が海野さんと仲が良いなんて……もしかして、海野さんも」
「ストップ!! それは口にしなくていいわ。隠しておきたい事だから。紗季はそんなに新キャラを増やして大丈夫なの? 漫画家だって事は隠してたんじゃなかった?」
そうだ。学校は紗季が漫画家なのは知ってるけど、私と蛍、花畑君しかしらない。紗季は悟に漫画家である事を伝えてるし、小鳥遊さんにも言ってると思う。学校ネタだから、隠してたはずなんだけど……
「そうでもないかな。単に信じてもらえてないだけだし。ペンネームなのもあるけど、マイナーな四コマ漫画だからな。全然言ってもありなんだけど」
そういう理由!? 紗季もそこまで強く主張したわけじゃないけど、紗季の行動力を考えると、漫画家と信じてもおかしくないけど、ただの変な奴とでも思われてる?