番外編 花畑薫は有野の企みを阻止……出来る?
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正気なのか!? と俺は目と耳を疑う事が何度あるんだと思う。
一つ目は体育、身体検査を終えた後で、有野と井上が仲良くなっていた事だ。有野に友達が増えたら駄目とは言わないが、井上は能力者だ。有野が利用しないわけがない。
俺みたいに弱味を握られた……感じじゃないな。井上も他の奴等と距離があるように見えたから、彼女にとっては良かったかもしれないか。
二つ目。鉄が有野を学祭実行委員に任命した事だ。奴の事だから何かやらかしたんだろう。その罰としても、学祭実行委員はどうなんだ? 去年みたいな有野の行動を阻止するのもあるが、委員の肩書きで馬鹿騒ぎする出し物をするかもしれないぞ。
それに巻き込まれる俺……想像してしまうじゃないか!!
そして、三つ目だ。学祭が始まる以前に巻き込まれるなんて……鉄が有野にパートナーを選ぶ権利、推薦する権利を与えた。ここは叶や友達になった井上を選べばいいのに、何故俺を指名する!?
周囲の視線を浴びるは、思わず変な顔になってしまうはで散々だ。まぁ……若杉の立候補でみんなの意識はそっちに向かったから少しはマシになったが……
若杉の立候補理由は誰かを推薦するため。結局、却下はされたが、推薦された場合は無理とは言えないのか? 若杉のパートナーが誰もいなかった場合、くじ引きで選ぶらしいが……それでも俺になる可能性はある。
それを回避する方法はないのか? そこで女子の小声が聞こえてくる。『体育測定の若杉はヤバかったし、パートナーになるのはちょっと……別の委員に立候補して避けてみる?』……と。
(それだ!! 背に腹は代えらない)
女子達の案を俺は頂く事にする。若杉とは別の意味でパートナーになってくれる人物がいるかどうかになるが、有野と一緒にするよりかは断然良い。
「有野は学祭実行委員なのは間違いないぞ。推薦より立候補が優先されるが、有野は例外だ」
鉄も有野が移動する事はないと証明してくれた。
ここで問題なのは何の委員になるか……だ。
HR委員は駄目だ。クラスで起きるかもしれない有野な厄介事の面倒を見る事になるかもしれない。
風紀委員は……HR委員よりも範囲が拡大する? 人数はいるが、風紀を乱す行為を有野をするなら、止めるのは同じクラスの俺か!?
放送と図書はすでに立候補者がいて、決定している。なら、残りは美化委員。掃除以外に何かするイメージはなく、そこまで時間を縛られるとも思えない。何より、有野が何かしても止める必要はないからな。
「それなら、美化委員に立候補で」
「分かった。花畑は美化委員だな。有野の推薦枠は取り消すぞ」
鉄は黒板の美化委員の欄に俺の名前を書いた。
(回避成功……これで安心出来る)
と思ったが、何かの視線を感じる。それは有野が俺の方を見て……笑っている!? 叶や井上との会話で笑った……のか?
違う!! あれは良からぬ企みを考えている顔だ。