格闘漫画じゃないから
「意外と時間が掛かったみたいだけど、どうだった? 面白い話は聞けたか?」
放送室から出ると、悟よりも紗季の方が食い付くように聞いてきた。時間としては十五分ぐらい? 悟の方が気にしてるはずなんだけど、この展開はある意味予想はしてた。
「まぁ……色々と説明してくれた。担当の人は能力者でもあったから。悟も安心していいと思うよ。全然怖くないから」
紗季の事は置いといて、悟に言っておかないとね。
「そうなんだ。なら、次は私が話を聞きに行こうかな」
「いやいやいやいや……本命は後でしょ。次は私が行く。根掘り葉掘り、情報は仕入れてくるから」
紗季は悟が放送室に入るのを止めて、自分が先に行くと言い出したわけで……
「熱血格闘漫画みたいのノリになってるから……」
周囲の女子達は展開について行けてない。白先生も紗季が大人しくしてたからか、身体測定の手伝いの方に行っていて、馬鹿げた発言を止める人もいないし……
「わ、分かった。後の事は任せてください」
悟はこの短期間で紗季のノリを理解したのか、ネタに乗ってくれたみたいだけど……
「迷惑はかけない程度にしないと駄目だからね」
紗季は後ろ向きで手を振りながら、放送室の中に。本当に分かってるんだろうか? そのノリで対応される小鳥遊さんが可哀想というか……説明好きなら、案外話が合ったり?
五分後……私の時とは三分の一の時間。
悟以外の近くにいた女子達も、小鳥遊さんが話した内容を聞いてきてたんだけど……
「ふげっ!!」
「貴女はもういいですから」
放送室の扉が開き、小鳥遊さんに紗季は追い出されてしまった。子供の姿では無理だったのか、本来の姿に戻る始末。そして、小鳥遊さんは周囲を見回して
「お騒がせしました。これからは端的に進めていきます。詳しく能力者の話を聞きたい場合、放課後でも構いませんし、来週から保健教諭として配属されるので、その時でも大丈夫です」
小鳥遊さんはみんなに頭を下げ、放送室に戻っていく。っと、その前に「有野さんは聞きに来ないでくださいね」と釘を刺されてしまった。
彼女が私に『教えてください』と言ったのも、学校に来る事が決定してたからね。白先生を追い返したのも、すでに顔見知りだったからかも。
まぁ……そんな事よりも、ある意味で返り討ちにされた紗季だよ。大袈裟に倒れ込む始末。
「はぁ……小鳥遊さんに何したの? あんな風な感じじゃなかったけど」
どうせ、漫画のネタにするからと色々聞き出すとは言ってたから、小鳥遊さんの話を聴かずに一方的に聞こうとしたのかも……
「ふっ……あの女の【変身】シーンが見れただけでも本望だ。あと……彼女が言った説明を後で教えてくれない?」
小鳥遊さんには申し訳ないけど、紗季は全く反省してないから。