ロボットダンス
「はぁ……面倒臭い。白先生の視線が痛いし、漫画家に求める事でもないだろ」
「こっちもある意味被害を被るんだから。紗季を止めるのはお前の役目……って、視線を向けられてる気がするし」
「それは自意識過剰じゃないか? ……って、お互い様か」
体育測定は体育館で行われる。握力、反復横飛び、上体おこし、長座体前屈、垂直飛びを計測する。50m走や持久走、ハンドボール投げは体育の授業でやる事になっているから。
白先生が私と紗季に視線を送るのは、紗季が何かやらかすか警戒しているわけだ。まぁ……紗季もそこまで大事を起こしたわけでもないんだけど、白先生は私の事を紗季のお目付け役としてる風な時がある。それは花畑君もそう思ってるぼいし。
「白先生も私達が真面目にやってれば、何も文句は言わないと思う。まぁ……平均行けたら嬉しいところだけど」
「そう言えるだけ陣子が羨ましいから。本当、見る立場になりたいぞ」
紗季は全般的に運動が苦手だ。自転車に乗れないし、泳ぐのも無理だから。けど、私も紗季よりもましなだけで、褒められるようなものでもない。
ジャージは好きだけど、運動が出来るとは限らない。シンプルに動きやすい。学校指定ジャージもなかなかの逸材で、私服に使っても良いレベル……と、単なるジャージ好きでしかないから。
「紗季の反復横飛びは面白いからね」
紗季自身、反復横飛びを真面目にやってるつもりなんだろうけど、ガチゴチというか……ロボットみたいというか。スキップもリズムに乗れない感じだし。自身の事を漫画にしてたから、こんな事を言えるわけなんだけど。
「それはすでに描いたから面白味もないんだよ。そこに胸の大きさがあれば」
紗季は握ぎ握ぎと手の動きが胸を揉んでる風で、変態……というか、私と一緒ぐらいにオッサンが似合いそう。
「胸なら自分の物があるんだから、それを揉んでなさいよ」
紗季にツッコミを入れるけど、無反応。いや……面白いキャラとなる人物を発見した?
「井上が一人だ……これはチャンスじゃないか?」
確かに井上さんがポツンと表を持って一人で立っていた。表は体育測定の結果を書いていく物で、体育館の入口前で渡される。
今回は結果を自身で書き込んでいく。反復横飛びや長座体前屈、垂直飛びもペア、もしくはグループでやってる子達ばかり。私は紗季がいるから良いんだけど、ぼっちにとっては厳しいイベントかも。
「本当だ……一人でいるようなタイプじゃなかったんだけど?」
井上さんは自己紹介でも明るい感じで、能力者と打ち明けていた。栄養ドリンクで笑い者にされたのは、いい気持ちはしなかったけど……
「クックックッ……仲間に引き込もうじゃないか」
紗季はぼっちの井上さんに向かっていく。こういう時の行動力は凄いと思う。
「仲間……それはどういう意味で!?」
まさか、能力者同士の仲間ってわけじゃないでしょうね!!




