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トイレを理由にするのは憚れます


「結構時間掛かったけど、何かあったわけ?」


 そう言いながらも、紗季は私の方に顔を向けない。置き去りしたのを恨んでいるのか、理由を知ってるのにそんな事を聞いてくるし。オッサンのままで蛍に会うわけにもいかないでしょ。しかも、オッサン単独で【ケーキング】に入る勇気もないから。


「まぁ……トイレで色々とあったの」


「もう!! 女子なら別の理由を考えないと駄目でしょ。こんな場所なんだから」


 トイレを理由にしたら、蛍に怒られてしまった。飲食店だったのもあるし、『花を摘みに行くのが忙しい』とか言っても客も女性なんだから隠語だと分かるでしょ。


 これは本当に事実であるわけで……紗季からのメッセージで叫んでしまったため、ある意味でトイレから飛び出す口実にはなったけど、男達の視線は痛かった。


【変身】が解けるための場所捜しも、使った事のないコンビニのトイレを使った。そこなら男女兼用だったし、客も全然いなかったから。店員は『オッサンが女子?』と困惑したかもしれないけど……


「ゴメンゴメン……それで、一体何があったわけ? 私達以外の客達はチラチラとあの人を見てるんだけど……有名人なの?」


 いや……違う。紗季に至ってはチラチラではなく、ジッと見てるわ。その人物はスケッチ対象にされてるらしい。


 私が【ケーキング】に入る前、男二人組が店から飛び出してきたけど、ちょっとした噂で【ケーキング】はナンパされる場所となっていた気もする……


「私達がナンパされているところを、あの女性が助けてくれたの。美人な上に男らしい部分も見せてくれて、客達はファンになったかもしれないわね。ここらで見るのは初めての人だけど」


 そう言う蛍は全く興味が無さそうだ。というより、残念そうな顔をしているんだけど……


「まさかだけど……ナンパされるために、この店を選んだわけじゃないわよね?」


 蛍は何も言わず、素知らぬ顔で紅茶を一口。


(そのまさかだ。ナンパされていたら、私……オッサンが助けに来ると思っての行動でしょ!!)


 紗季もナンパに利用されたのか、すでに蛍から話を聞いてるのか分からない。紗季は漫画のネタになるなら、ついて行きそう……というより、今回は連れて来られたの間違いか。


「はぁ……目的は失敗に終わったのよね。私はそこまでお金がないから、帰ってもいい?」


 トイレの写真は後で紗季に送ればいいし、蛍がどう行動に出るのかも分からない。


 蛍は紗季にオッサンの事は知られたくなかったわけだけど、不覚にも一緒に自転車に乗っているところを目撃したわけだからね。


「駄目ね。今回は割引されたから、私達が払ってあげるから。紗季も学校をサボった罰でもあるから」


「はっ!? 何で私も一緒に……分かりましたよ」


 紗季も蛍の圧に渋々了承して、私を帰らせるつもりはないらしい。

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