番外編 花畑家の新たな家族
「いやいや!! 飼うつもりは最初からないぞ。コイツの声が俺しか聞こえなかったから、飼い主探しを手伝っただけで」
「……待ってください。彼女は何者!? いえ……貴女こそが本物の勇者なのですか!!」
ネコも俺と母さんの姿にチンプンカンプンになっている。
「勇者? 私は薫のお母さんですよ。犬さんのお名前は?」
「犬ではなく、魔狼……狼のネコと申します……ではなく、貴方の母上!? 逆らえない感じがするのは」
ネコは母さんの質問にすぐ答えたのには強制力があったのか? 母さんは能力者じゃないはずだぞ。
「魔狼のネコちゃん? 普通の犬じゃないのね。【妖怪の森】にも出てきそうじゃない。知ってるような感じがするのもそれかしら? もしかして……ネコちゃんが誕生日プレゼントだったりするの?」
母さんの誕生日は明後日だけど、前回のコスプレ服みたいに勘違いしてるぞ……って、『知ってるような感じがする』というのは【妖怪の森】じゃなかったら……
俺がオバサンに【変身】出来るのは、乙女座流星群の光を受けたからなんだが、あの時は母さんが近くにいたんだよな。あの光が勇者と似た体に入るつもりが、俺と母さんを間違って、中に入った可能性があるんじゃないか?
「プレゼント? 贈られた事は確かですが、あの時が誕生日だったかは……」
「うぅ……そんなの捨てられるわけないじゃない。ここは大家さんを説得するしかないわ。アパートの番犬にして貰いましょう」
魔王が勇者にネコを贈ったのかもしれないが、俺が母さんに誕生日プレゼントとして贈ったわけじゃない。ネコが母さんを勘違いするように言ったわけじゃなく、母さんが自爆したわけだが……
「……仕方ないか。俺達と一緒に来てもいいけど、五月蝿くするなよ。俺や母さんの命令は絶対だからな」
勇者や魔王の事なんて放置したいところだが、俺の目の届かないところで、母さんに迷惑を掛けるかもしれないからな。勿論、俺を巻き込むのも止めて欲しいところだけど……
「ありがとうございます。今は二人が主という事で。それも追々と調べていきますが、魔王様の事も協力お願いします」
「礼儀正しいわね。もっと可愛い感じでもいいんだよ」
「ぎはっ!!」
ネコは頭を下げると、母さんは可愛さのあまりに強く抱き締めた。その力強さにネコの意識が飛びそうになってるけど、俺もネコを抱き締めて……みたくはないんだからな!!
こうして、俺の家に新たな住人? チワワのネコが住むようになった。