番外編 花畑薫と阿鼻叫喚の景色
「いましたよ。すでに魔王様は亡くなっていますが……昔話にあるような勇者と魔王の戦いはありません。人間と魔物が手を取り合う事に、二人は力を注いでましたから」
「おおっ……良い世界じゃないか。そんな世界なら、武器と防具なんて必要ないだろ」
「人間と魔物にも反対派がいましたからね。協力関係になるまでに、何度か戦闘もありましたから」
ネコの言葉を信じると、漫画やアニメみたいな世界が本当にある事になるんだよな。
「……もしかして、ネコの主というの魔王様?」
すでに魔王は亡くなっているなら、異世界に転生した? 呼ぶ時に様を付けていたわけだし。
「元々はそうでしたが、今の主は勇者様です。勇者様は魔王様が転生した事を占い師から教わっただけでなく、危機に瀕すると聞き、転移を決意しました。その中で勇者様についてきたのは三人。全員がバラバラに飛ばされたみたいですが……」
「魔王のために勇者が転移? 倒すためじゃなくて、助けるために?」
魔王の存在が本当だとして、危機に瀕するような異変は起きてる感じはしないぞ。待てよ……能力者が登場した事が関係してるのか?
「そうです。主は親友として、魔王様が幸せになるのを願ってました。それだけ壮絶な人生を送ってましたから」
凄い話になってきたんだが、気のせいじゃないよな? ネコ以外にも異世界から来たのが三人いるわけで……勇者=主なんだろ。何気に占い師も話の中に出てきたし、同一人物というのは流石にないよな? 下手すれば、俺の【変身】した姿が勇者だって事に……
俺としては魔王を助ける気持ちなんて全然起きてないし、女難のそうだけでも嫌なのに、色々と面倒臭そうだ。一緒にいる間は【変身】はしないぞ。ネコと別れるのも早い方がいいか。
「とはいえ、この話を信じて貰えるかどうか。元の姿に戻る方法も分かりません。ですが、一つだけ使える【能力】はあるので、それを使えば」
「ちょっと待て!!」
こんな場所で【能力】を使うなんて!! 先にどんな【能力】なのかを教えて貰わないとだな。周囲に危険が及ぶ物なら……
「わお~ん!!」
ネコは俺の制止をよそに、遠吠えを上げた。それが【能力】を発動するのに必要な事なんだろう。
「ぎゃあああ!!」
「いや~!!」
「何じゃこりゃあああ!!」
至るところで叫び声が響いてくる。特に多いのは女性の声だ。周囲を確認すると、大半の女性手で顔を覆っている。
「強化を解除する【能力】です。戦闘もないのに、強化してる人間が多かったので……」
強化解除……女性達のメイクがそれに該当したんだろう。突然スッピン状態になれば、自身だけでなく、一緒にいる奴も驚くという阿鼻叫喚状態。
「わしの……わしのカツラが!!」
カツラは装備品ではなく、強化認定されたオッサンもいるみたいだが、それは無視しておこう。
「これはある意味で悲惨な光景だぞ。勝手に【能力を】……」
と、声を出して気付いた。俺の声が男から女の声に……強化解除のはずが、【変身】した状態になってるんだが!!