表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

197/245

番外編 花畑薫と犬

 取り敢えず、商店街の中でも人気の無さそうな場所……空き店舗の裏に移動した。わざわざ、犬が喚いてるからと覗きに来る奴なんていないだろうからな。


「はぁ……頼みを聞かないと、ずっと付いて来そうだからな。一体何をして欲しいんだよ」


 本来の姿に戻りたい……というのは違う気がする。狼だと思い込んでるだけ。こんな場所に狼がいるわけがないし、群れで行動するのは【妖怪の森】に登場する狼妖怪の大神(おおかみ)さんで知ってるからな。


「その前に食べ物を何か……こっちに来てから、何も食べてなくて」


「……ほら」


 ここに来るまでに一度コンビニに寄って、ペット用の缶詰を買っておいた。ネコも一度追い出させた事があったのか、俺が外に出てくるのを律儀に待ってたからな。


「これは……良い匂いがしますね」


 ネコはクンクンと匂いを嗅いだ後、ガツガツと中身を平らげる。余程、腹が減っていたのかもしれない。流石にその姿は獣って感じで、可愛さ半減だ。


「満足です。よく私がお腹を空かしてるのが分かりましたね。魔法でも使いましたか?」


「魔法って……人間みたいに腹の虫が鳴ってただろ」


 俺に声を掛けながらも、ギュルルルル……と音が鳴ってたからな。腹の音が言葉に変化される事はなかったみたいだ。


「なるほど……凄い洞察力です。やはり、協力してもらうのは貴方しかいないようです。どうか、我が主を見つけて貰えませんか?」


「……はっ? 頼み事って、人探しなのか?」


 主……飼い主の事じゃないのか? やっぱり、犬だろ? 臭いで探し当てるとか、人間よりも優秀な気がするんだが……


「そうです。この街は主の匂いが強く残っているので、何処かにいると思うのです。ですが、土地勘が全然なく、今も僅かながらに匂いはしていますし……」


 土地勘がない……引っ越して来たばかりなのか? それでも臭いが強く残っているというのも……まさか、捨て犬とかじゃないよな? 喋る犬なんて怪しい以外の何者でもないぞ。


「その飼い……(あるじ)を探すより、自分の家に戻ればいいんじゃないか? ここで探すよりも確実だろ」


 土地勘がなくても、主の家の場所には戻れるんじゃないか? そういう犬の逸話は何度か聞いた事がある。


「無理ですね。私に元の世界に戻るための力はないです。送って貰った形なので」


「元の世界って……厨二みたいな言葉を使うよな。お前の主はオタク系か」


 所々に厨二みたいな言葉を使うのは、一緒にアニメを見ていたのかもしれないな。この場所に来たのも、車で移動した感じか?


「オタク……というのは分かりませんが、元の世界に戻るつもりはありません。主の役に立つために来たのですから」


 忠犬……なのか? 捨てられた可能性は否めないけど、人に頼み事するのも、食べ物を要求するのも、主に再会するためだとしたら……


「……少しだけだぞ。で、その主の特徴は? 色んな場所を案内すればいいのか?」


「感謝します。主も私のように姿が変化してる可能性があるので、分かりません!!」


「『分かりません!!』って、駄目だろ!! 主……がお前みたいに変化しないから、覚えてる時の事を教えろ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ