番外編 花畑薫とネコ
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「はぁ……学校を休んでまで、何をやってるんだか」
商店街の中にある公園のベンチで休憩しながら、後悔している。人助け? ではないんだけど、人探しの手伝いをしているわけなんだが……
「これも占い師の言ってた女難に関係するにしても……それは反則だろ。警戒はしてたとつもりだけどさ……」
ココアな気分だけど、【変身】する可能性を考慮して、コーヒーで気持ちを落ち着かせる。
昨日、謎の占い師に勇者や魔王、魂がもう一つあると馬鹿みたいな話を聞かされたけど、女難だけは注意しようと考えてたはずだったが……
「いつまで休んでるつもりですか? 貴方がいないと情報を手に入れるのは難しいんですからね」
「……分かった分かった」
俺に声を掛けてきた女性……じゃなく、メスに頭を下げた。というのも、相手はチワワであり、喋る犬なわけで、女難に動物のメスが含まれると誰が思うんだ?
俺とチワワが出会った時の事を思い出してみよう。
学校に向かう途中。浦島太郎の亀の如く、子供達数人がチワワを囲んで、苛めていた。そのチワワは大きな眉毛みたいな斑点が面白いせいもあったかもしれない。俺は【妖怪の森】に出てきそうなキャラだと思ったぐらいで……ともかく、可愛い物を苛めるのは、子供でも許すわけにはいかない。
「おい……」
その一言だけで、子供達は犬を置いて、逃げて行った。この時ぐらいは、顔が怖くて良かったと思う。チワワは子供達を追い払った事に感謝するかのように、近付いてきて……
「感謝します。本来の姿であれば、あんな者達等、一網打尽にするのですが」
「……犬がしゃべった!! えっ!? 何? 本物の妖怪!!」
子供達がこのチワワを苛めていた理由は、喋る犬だったからか!?
乙女座流星群によって、特殊な力を持った女性が増えいく中、俺だけが例外と思ったけど、動物にもその力が宿ったのかもしれないのか……もしくは、本来の姿とか言ってるし、俺とは別の【変身】の力を持ってるのか?
「妖怪? それが何なのか分からないが……私の言葉が分かるのか!?」
チワワの方も驚いてるいるんだが!! 実は俺だけが特別? 占い師が言ってたみたいに勇者が関係……
「子供達にしか聞こえてなかったのに」
しないのか!! 流石にどう反応していいか困るぞ。こう見えても高校二年……大人の部類に入るよな? 酒やタバコは無理だが、バスや電車は大人料金だぞ。
いや……待てよ。子供達にしか聞こえてなかったという事は、周りから見たら、俺はチワワにずっと吠えられてる状態……滅茶苦茶怪しいじゃないか!!
「そうか……じゃあな」
用事はすでに済んだ。ここから離れても問題はないはず。
「待ってくれ。言葉が通じるなら、手伝って欲しい事があります。子供達だとイタズラしてくるだけで」
チワワが離れようとせず、追い掛けてくる。その可愛さは反則だ。
「手伝って欲しい事? 本当は人間で、元の姿に戻る方法とかか?」
【変身】が解けない状態だとすれば、気持ちは分からないでもない。時間の経過で解けないなら、何か食べる事が必要か? チワワの姿で買い物も無理だし……
「いや? 本来の姿は狼ですね。名前はネコです」
「チワワが狼で、ネコ!? ツッコミどころが多すぎるわ!!」