この日は強制参加です
「そろそろ昼休みも終わる時間だぞ。遅刻するのは駄目だからな。映画を見て、もっと好きになってくれる事を祈っておくよ」
「は、はい!! 頑張ります」
花畑君をより好きになるんじゃなくて、【妖怪の森】の事を言ってるんだろうけど、雪見は気付いてなさそう……
それはともかく、私と響鬼先輩、雪見は保健室を出た。
「【妖怪の森】の映画に行くなら、前売り券をGETしておくべきだよな。お礼ともなれば、素直に受け取るのが男だろ。問題は何日にするかだが」
「す、全ての日を予約します!! どの日でも行けるように」
「そ、そこは花畑君と話をしてからでいいんじゃない? そこまでするのは凄いけどさ。最初からやり過ぎなのは……」
雪見もマジな顔をしてるから、ここは止めておかないと。お金の問題もあるけど、そこまで仲良くない相手に『全部の映画を用意しました』と誘われても、ちょっと……大分引いてしまうじゃないの?
「そ、そうなんですか? お笑いと一緒で難しいです」
雪見はマジな顔からシュンとした顔にとコロコロと表情を変えていく。
「まぁ……私や叶もそんな経験ないからな。難しいのは当たり前なんだよ」
「ひっ!!」
響鬼先輩は雪見に気合いを入れる感じで、バンバンと背中を叩いてる。確かに好きになったのはアニメや漫画のキャラぐらいで……って、そこはどうでもいい話だわ。
「花畑君も病気じゃないみたいだし、明日には来るはずと思うし。滅多に休む事はないんだけどね。人助けをしたのが理由みたいだよ」
「人助け? ズル休みもなく、滅多に休まないなんて、見た目によらず真面目かよ」
「や、やっぱり、花畑先輩は素敵です」
見た目に関しては響鬼先輩も人の事を言えないんだけど……
花畑君の人助けの件は、若杉の方に【ライソ】が届いたみたいなんだよね。【ライソ】が来た事に喜んでいたのが、昨日の話を聞くと……
「あ、あの……映画なんですけど、最初は先輩達も一緒に」
「私の場合、姐さんに誘われてしまったからな。そこは断る事も出来ないぞ。それに私がいると、アイツが警戒するかもしれないだろ? 昨日の昼休みに絡んでしまったからな」
雪見のために話を聞きに行ったは良いけど、よく思われてない事は響鬼先輩も分かってるみたい。
「となると……私? 紗季の漫画も落ち着くと思うから、行けるとは思うけど」
そうなると、雪見の好きな相手が花畑君だと紗季にバレる可能性があるか。紹介はするけど、一緒に行くのは不自然な気はするんだよね。
「陣子!! そこにいたのね。紗季や悟にも伝えたけど、GWの五月五日は空けといて。そこでお披露目出来るかもしれないから」
蛍と廊下で遭遇。響鬼先輩や雪見がいるのにも関わらず、言いたい事だけ言って、教室へと戻ってしまった。【ライソ】でも良かったんだけど、そこまで考えられない程、疲れがあるのかも……
「いきなり何だ? 叶の知り合いみたいだけど」
「私の親友の一人で……五日は駄目になったかな」
響鬼先輩が白先生の頼みを断れないみたいに、蛍の件に関しては断る事は無理。響鬼先輩達に相談はしたいと思う反面、昨日の感じだと変な方向に行きそうな感じがするし、雪見と正反対の相談だから、雪見は知らない方がいい気がするんだよね。