若杉は花畑君に惚れている?
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「店長、ゴメンなさい。少し遅れちゃって……」
「全然大丈夫。こっちこそ、急な事だったのに申し訳ないぐらいだよ。先生の手伝いもあるだろうに……」
雪見の恋愛相談が終わり、響鬼先輩達に蛍の事を相談しようとしたタイミングで、店長から連絡が入った。バイトの一人が熱が出たらしく、代わりとして私に白羽の矢が立ったわけ。日頃から私だけじゃなく、紗季も世話になってる以上、断る事も出来なくて、今に至るわけ。
「そこは紗季に了承を得たから大丈夫ですよ」
「それは良かった。帰りに好きな料理を持って帰ってもいいからね」
今日に関しては色々あったから、紗季のアシスタントは止めておくつもりだったからね。一応、紗季にもちゃんと連絡は入れてるから問題なし。
「ありがとうございま……うわっ!! ブサイクが余計に不細工に」
「おい!! それは酷いん……イテテテテっ」
今日は若杉もバイトに入ってるんだけど、頬が異様に腫れて、片方だけおたふく風邪みたいになってる。厨房だからいいけど、ホールなら絶対アウトでしょ。
「もしかして、響鬼……猪狩先輩達に絡んで、殴られたとか? 昼休みに声を掛けたんだよね?」
「違っ!! あれは花畑と話してたからで……やましい気持ちはなんて……この腫れも猪狩先輩じゃなくて、花畑にやられただけで」
響鬼先輩が若杉を殴ってたら、恋愛相談の時にでも言ってそうだから、ないとは思ってた。けど、花畑君が若杉をこんな風にしたのは意外なんだけど……単に若杉が打たれ弱いわけじゃないよね?
「花畑君がそんな風にするなんて、アンタが余程の事をしたんじゃないの?」
どっちが悪いかを疑うなら、若杉の方を選ぶかな。花畑君は周囲に怖がられてるけど、雪見を助けたりと優しい一面があるから。
店にはまだ客が入って来ないから、私と若杉が話してても、店長は文句は言わない。会話に入る事があるぐらいだから。
「いや……そうなのかも。危うく、俺が花畑の事を好きになりそうになったからさ」
「気にいってるのは確かじゃないの? 金魚の糞みたいにくっついてる事が多い……じゃなくて!! どうしたら、そんなカオスみたいな状態になるのよ」
若杉が花畑君と仲良くなったのは確かなんだよね。花畑君もなんやかんやで突き放す事はしなかったわけだし。もしかして、雪見みたいに若杉も花畑君に助けて貰ったわけ?
「金魚の糞は言い過ぎだよ。男同士で好きにやっても問題ないんじゃないかな?」
「て、店長!?」
店長が爆弾発言しながら、会話に入ってきたんだけど!! BLを肯定するのは全然良いけど、店長自身がそっちなの!? と思ってしまうじゃない。
「ち、違うからな。路上で占い師が俺達に声を掛けてきたから、恋占いをしたわけで……」
その先を言い淀んでるけど、運命の相手が花畑君だったわけね。
「俺が今好きな奴よりも、運命の相手は別にいる。それも近くにいるらしくて……あまりのショックで、動転したわけだ。占い師も花畑を女扱いしてたし」
「若杉の運命の相手……私じゃない事は確かだし、紗季や悟も……って、花畑君を女扱い!?」
花畑君を女子と勘違いするなんて、紗季の【学遊日誌】の愛読者なの? いや、花畑君がモデルになってるのは一読者が分かるわけないし、あのキャラもヒロイン的存在であるけど、男だ。