番外編 花畑薫の会心の一撃
「冗談で済ますつもりなら……」
「お前は自己中心的で、空気を読まないタイプ。空回りする事が多い」
「うっ!! そ、そんな事は……」
占い師は水晶に手も触れず、若杉について話し出した。しかも、的を得てるのが凄い。若杉も少しは自覚してるのか、言葉に詰まってるぞ。
「好きな女子には相手にされてないのではないか? お前からしか話し掛けてない感じだ」
「ぐはっ!! だが……まだだ」
言われたくない事をズバズバと言ってくる。当たってるだけに、若杉の心がKO寸前だ。それなのに立ち上がってくるのは……
「対策を……どうすればいいのか教えてくれるんだろ!!」
なるほど!! 若杉は占い師が、仏が如く最後に蜘蛛の糸を垂らすと考えたわけだ。ここまで言われたら、藁にもすがりたい気持ちになる。
「『諦めろ』の一言」
占い師は蜘蛛の糸どころか、若杉を地獄に突き落とした。もしかして、若杉の言葉にムカついてたいたんじゃないか?
「……お前の運命、相性の良い相手は別。意外と近くにいるものだ。とはいえ、これを信じるかはお前次第。簡単ではないが、覆す事も出来る。これは占いに過ぎないのだから」
おおっ!! 地獄に突き落とすだけで終わるかと思ったが、ちゃんとしたアドバイス的なものも言ったな。これを若杉はどう受け取るか……
「って、何故俺を見る!! 絶対違うだろ」
「意外と近くにいる……のは花畑ぐらいかと」
「俺は男だからな!! 占い師と同じだぞ。俺じゃなくても他にいるだろ。遊園地で一緒に遊んだ井上とか」
井上には申し訳ないが、若杉の正気を取り戻す必要がある。変に俺を意識されたら困るどころの話じゃない。取りあえず、一発殴っておこう。
「叶の事も諦める必要はない。占い師も結局は若杉次第と言ってるんだからな」
「……先程、殴ったせいで気絶してるのでは? 彼の膝が砕けてます」
「あっ……」
若杉の顎の部分に当たったのか、ストンと意識が落ちた状態になっている。この状態で、叩き起こすのは流石に気が引けるぞ。
「仕方です。近くにゴミ捨て場があるので、そこに置きましょう。臭いで目を覚ますかもしれません」
占い師も結構酷い事を言ってるな。だが、若杉がこの状態なのも忍びない。もたれ掛かる場所も必要だ。ゴミ捨て場じゃなく、電柱にしよう。
「はぁ……流石に放置したまま、何処かに行くのは無責任だな。その間に俺を占ってくれたらいい」
占い師に『彼女』と呼ばれた件がある。それを考えると、若杉の意識が飛んでるのは丁度良かったのかもしれない。