番外編 花畑薫は占い好きである
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「はっ……クシュン!!」
「おいおい……女子達に噂されてるんじゃないのかよ」
「なわけがあるか。というか、何故一緒に帰ろうとする? 部活をやってるんじゃなかったか?」
若杉が昼休みだけじゃなく、帰宅する時も一緒について来るんだが!! くしゃみしただけで、そんな言葉が出るなんて……部活を休んででも、俺が後輩や先輩達に声を掛けられた事を知りたいのか?
「部活は休みなんだよ。バイトの時間まで暇だから、その間でも遊ばないか? もしかしたら、一緒にいたら逆ナ……なんでもないぞ」
若杉は何の部活に入ってるんだ? と、疑問に思うところもあるが、別に知らなくても問題はない。
「逆ナンなんてされるわけないだろ。喧嘩を売ってくる奴の方が確率が高いからな」
今はそんな事は全然ないが、こう言っておけば、若杉はついて来ないかもしれない。今日は甘い物でも食べようと思ったのに、若杉と一緒に行くのは何か嫌だ。
「うっ……けど、花畑は強いんだから、守ってくれるから大丈夫なはずだ。商店街から駅に行って、学校から離れる感じか?」
いや……そこは女子でもないんだから、若杉自身で何とかしてくれ。しかも、学校から離れるのは、叶と遭遇するのを避けるためだよな。俺の行動を読んでるわけじゃないはずだぞ。
「……ナンパはしないし、商店街で買い物を済ますつもりだ。嫌なら別に構わないぞ。勿論、奢る気もないからな」
若杉がついて来るのなら、遠出する金も勿体ない。市販のお菓子で我慢するしかない。
「女の子に声を掛けられたら、逆にこっちが奢りたいぐらいだぞ。バイトが始まるまでの間だから、それでも構わないさ」
どうやっても、若杉は俺について来るらしい。最初はあんなに怖がってたのが嘘みたいだぞ。
「もし、そこのアナタ。二人組の貴殿方。稀な気を放っておる。私に一度占わせて貰えんか?」
声を掛けてきたのは怪しげなローブを着た老婆? 道端も道端。怪しげな水晶を置いて、占い師でもやってるのか? 水晶を置いた机の上には一回二千円と書かれている。
「……良かったな。女性に声を掛けられたじゃないか? 奢るとは違うけど、占わせてやったらどうだ?」
「いやいや!! マスクで顔が分からないけど、明らかに婆さんだし、セールスだよね」
「……私が占いたいのはお前じゃない。もう一人の彼女の方だ。彼女が占うなら、無料でも構わない」
「婆さん……何処に目をつけてるんだ? 花畑はどう見ても男だろ」
占い師が占いたいのは俺!? 若杉の方が簡単に騙されそうな気がするが……俺を女性と見た事が気になってくる。『稀な気』が【変身】の事を示してるなら、占い師は偽者ではないかもしれない。
それに……占いは嫌いじゃない。星座占いを毎日欠かさず見ていたりもする。
「……無料なら、やってるのも面白いかもしれない」
「き、聞くのか!! 花畑が無料なら、俺も無料にしてくれよ。俺の結果次第で、花畑が占うのもOKってのは?」
実は若杉も占いが気になってるんじゃないのか? だが、若杉の台詞は流石に注意するべきか。
「……仕方ない。今回は特別。お前がして欲しいのは恋占いだろ?」
「な、何故それを!!」
占い師は若杉が何を占って欲しいかを水晶なしで言い当てた。
「お前達、二人の相性がどうなのか」
「「何でだよ!!」」
占い師の言葉に、俺と若杉は二人同時にツッコミを入れてしまった。