番外編 花畑薫は更に勘違いをする
「姿見先輩と猪狩……先輩が知り合いなんて意外だな」
いや……二人とも有野の繋がりで知り合った可能性もあるのか。アイツの行動力は半端ないからな。
「まぁ……普通に話せるようになったのも最近の話だけどね。響鬼はこっちで引き取るから、そっちはゆっくりすればいいよ」
姿見先輩が猪狩を連れて行ってくれるのは助かる。一瞬、一緒の席で昼飯を食べるつもりなのかと思った。姿見先輩は購買部で買ったパンを二、三個持ってるのは猪狩の分のパンを入ってるのかもしれないな。
「こっちとしては助かるんだけど、あの質問は一体……」
「質問……響鬼が何か余計な事を言ったの?」
姿見先輩は猪狩を軽く睨んだ後、どんな質問をしたのかを聞いてくる……って、何処かに行くんじゃなかったのよ!? 俺としては今の一言が余計だったわ。
「能力者をどう思うか? 例として色んな能力を言ってきたけど……」
流石に女子がオッサンに【変身】するのは触れないでおこう。少しでも勘繰られる事は回避しなければ……
「はぁ……私と響鬼が能力者だから。誰かに聞いておきたかったのもあるんでしょ」
突然の能力者だと告白するのか!? 俺に聞こえるぐらいの小さな声だったけど、それを言ってもいいのか?
「おい!!」
「これは響鬼が悪い。君も他の人には黙っておくように。内緒にしている人もいるわけだからね」
「うっ……悪かった」
猪狩が姿見先輩を怒ろうとした時点で、これは嘘じゃないんだろうな。けど、能力者をどう思うのか? なんて、聞くのは俺じゃなくても……
「もしかして、有野達と知り合ったのも、それ関連か?」
能力者は漫画のネタになるからな。二人が能力者だと知られて、突撃されたのかも。井上ともすぐに仲良くなっていたしな。猪狩や姿見先輩も同じ感じか?
「有野? 漫画家の事だったら」
有野が漫画家と知ってるのは仲が良い証拠……いや、俺は有野と仲が良いなんて事にはならないぞ。
「ああっ!? 花畑ばかりなんで……俺も先輩達と一緒に昼飯を食べてもいい感じですか!!」
周囲の空気を読まない奴がもう一人……若杉がこの状況に割り込んできた。いや、俺の昼飯を持ってきてくれたんだから仕方がない。
「駄目に決まってるだろ。コイツの飯を置いて、消えろ。私達が喋ってるんだ」
即座に拒否され、若杉は猪狩の圧によって、口をパクパクした状態に。俺の分の昼飯をテーブルに置いて、別の場所に移動してもおかしくないぞ。
「ちょっと……立ち去るのは私達の方だから。君は彼とご飯を食べればいい」
「おい!! まだ会話の途中で……」
姿見先輩は席を立ち、猪狩を連れて行く。さりげなく、姿見先輩も若杉の誘いを断ったわけなんだが、二人が食堂から離れた後の雰囲気がシーンとなった。
「色々と詳しく話を聞かせて欲しいんだけど」
若杉は涙目になって、さっきまで猪狩が座っていた席に着いた。猪狩の圧が余程怖かったのか?
「なんで、お前ばかり女子達と仲良くなれるんだよ!!」
若杉の涙は単なる悔し涙のようだ……って、どうやったら、仲良くしてるように見えるんだよ!!