番外編 花畑薫は若杉の親友?
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「はぁ……勘違いされてしまった。羨ましかったのは確かなんだけど……何も思ってない感じがちょっと……」
「それを俺に言う必要はないだろ? 前回の遊園地の件で、頼るなと約束したはずだぞ」
昼休み。若杉が話し掛ける回数が日を追う事に増えてる気がする。そのせいで【妖怪の森】のパンを食べる事が出来なくなるというストレスも……
「親友なんだから、愚痴くらい聞いてくれてもいいだろ。食堂に行くなら、飯代は出すからさ」
しかも、いつの間にか親友にまでランクアップされている。当初は俺を顔を見るなり、逃げてた奴なのに……これも有野達と関わってしまったのが原因だな。
「はぁ……ジュースもつけてくれよ。それとチョコ系は駄目だからな」
「了解了解。花畑って、最後にはちゃんと聞いてくれるよな」
親友じゃないが、こいつの諦めの悪さは分かってるからな。
「それで……彼女とは何処で会ったんだ? 紹介してくれたら嬉しいんだけど」
「おい……勘違いされて、落ち込んでたんじゃないのかよ?」
「そうなんだけど……叶達の知り合いでもあるなら、友達になるのもありかなって」
外堀から埋めていく方法か? 逆に後輩と付き合うためにと、そっちの方が勘違いされると思うんだが……
「花畑もそうじゃないのか? 有野と仲良くなるために」
「……そこで有野が出てくるんだよ。紹介はしないぞ。俺もそこまで後輩の事を知ってるわけじゃないからな」
後輩は有野の事を師匠と呼んでいたからな。知り合いなのは間違いない。後輩と仲良くなり、有野の弱味を握って、対等な関係になるのは……
「もしかして……一目惚れされたってやつか!! その前に食券買って、並んでくるから。花畑は席の確保をよろしく」
「席の確保をよろしくと言われても」
昼休みの食堂で席を確保なんて、早めに行かないと無理だろ。周囲を見回しても、所々に一人だけ座る席があるだけだ。俺はそれでも構わないんだが……
「ひっ……どうぞ。すぐに食べ終わるんで」
別に睨んだわけじゃないのに、四人掛けに座る三人が俺を見るなり、すぐに立ち上がった。怖がられるのは慣れてるわけだが、少し悲しくなる。これも有野達や若杉が気にせず話し掛けてくるようになったからか?
「ふぅ……取り敢えず、席に座っておくか」
空けて貰った以上はここに座るしかない。別の場所に移動したら、単なる嫌な奴になるからな。若杉が来るまで、スマホで【妖怪の森】の最新情報を検索しておこう。
「ん? 早いな。まさか、金が足りなかったって事は……」
誰かが俺の座る席の前で止まった。その相手は若杉じゃなかった。若杉が並んでるところが目に入ったからだ。その人物は女子の制服を着てるみたいで……