遭遇!?
「……中央公園に行くのは良いけど、何で二人乗りしないと駄目なわけ?」
私は勿論、愛車の【疾風怒涛】に股がるわけだけど、紗季も後ろの荷台に腰を下ろしてる。
「私が自転車に乗れない事は知ってるでしょ。バスを待つ時間も勿体ないし」
私の場合、【東高校】まで自転車で通学しているけど、紗季はバス通学。距離的に自転車で行けるんだけど、紗季は自転車に乗れない。泳ぎも無理で、全般的な運動が苦手。所謂、運動音痴だ。
「はぁ……仕方ないか。駅前で何か奢りなさいよ。【変身】させた事もあるんだから」
「はいはい……タダじゃないくらい分かってるから」
渋々、紗季を【疾風怒涛】の後ろに乗せて出発。通り過ぎていくオバサン達は奇異な視線を送ってくるんだけど……
「何で私達は周囲に見られてるわけ……それをスマホで撮るアンタも大概だけど……」
「まぁ……こんな時間帯にサラリーマンが若い女の子と一緒に二人乗りしてたら怪しいと思うのは当然じゃない?」
そういえば、今日は始業式だけで学校が終わったから、時間的にまだ夕方にもなってない。オッサンが女の子と一緒に外へ出掛ける。しかも、スーツを着た状態なら余計に怪しいって、私も何で気付かなかったのよ!!
「それを早く言いなさいよ!! 紗季の評判が悪くなるんだかね」
「親戚だとか誤魔化せる方法はいくらでもあるし、そんなの気にしてたら漫画家なんて無理だって。急いだ方が逆に怪しいと思われるぞ」
滅茶苦茶急ぐつもりだったけど、そこまで言われたら仕方ない。最悪、私が【変身】していた事を明かせば問題がないわけだから……最悪の場合ね。
「……堂々としていれば大丈夫ってわけね」
「そうそう……もしもの時は逃げるのも手だけど」
「逃げる? 声を掛けてくる人なんかいる?」
「警察とかね。ほら、あそこに」
警察は流石にマズイでしょ!! 二人乗り自体駄目だから、絶対声を掛けられるって。堂々としてる場合じゃないから!!
「……というのは冗談だから」
「冗談でも質が悪いわ!! 念のために駅前に来たら、紗季は降りなよ。パトカーが回ってるかもしれないんだから」
そろそろ、駅前商店街に入る。私達と同じ学校の連中がいるかもしれないから注意しないと。でも、紗季は制服を着てないからバレないとは思うけど。
「……何で手を振ってるわけ? 誰か知り合いでもいた? また私を驚かせるだけなら」
紗季が手を振ってるのが見えて、私も顔を振り返った。離れた場所にいたのは……蛍!?
「蛍がいたからさ。無視するのもおかしいだろ?」
「それはそうだけど!! 私がオッサンに【変身】する事はバレたら駄目だって」
蛍も紗季に気付いたようだけど、私の顔を見て、更に驚いたような表情をしたわけで……
「なぁ……蛍が凄い表情でこっちに寄ってきてるんだけど……私は何かやらかした? 学校を休んだ事を怒ってるわけ?」
紗季がやらかした事は何度もあるけど、今回は違った意味でそうかもしれない。