似た者同士?
「ちょちょちょっちょっと!! 何なんだよ、あの子は!? 何で後輩に挨拶されてるんだ。花畑には有野がいるだろ!! 羨まし過ぎるぞ」
雪見が花畑君に挨拶してるところを見たのは私と悟だけじゃなかった。嫉妬に狂った若杉の奴が花畑君に言い寄ってる。
「はっ!? 何で有野の名前が出てくる。俺はアイツが苦手なんだよ」
だよね? 紗季にあんな扱いされて好きになるなんて、余程のマゾじゃないと……って、親友の私にそのまま跳ね返ってくるわね。
「その話は私も聞きたいです。紗季もそうだけど、雪見は私の後輩でもあるから」
悟は花畑君と若杉の話に割って入っていく。私も無視するわけにもいかず、渋々ついて行く。
「井上と叶……有野は!!」
花畑君は紗季が周囲にいないかを見回した。雪見が挨拶してきた事が弱味になる。もしくは、漫画のネタになると警戒したのかも。こんな風な態度を取ってるのに、花畑君が紗季の事を好きなんて事はないでしょ。
「いないから安心しなよ。今の若杉みたいにネタにされるかもしれないからでしょ?」
「……そうだな」
花畑君をホッとした顔をしたけど、若杉の方はみるみると顔が青ざめて……
「う、羨ましくなんかないぞ。俺は一途なんだからな」
と、意味不明な事を言って、校舎の方へと走り抜けていく。
「……アイツは何が言いたかったわけ?」
「可哀想だけど、放っておいてもいいと思う」
「申し訳ないが……井上と同じ意見だ」
悟と花畑君は若杉がこの場から逃げた理由は分かってるみたい。放っておいてもいいなら、その方が楽だし、気にする必要もないか。
「それよりも雪見の事の方が大事なんだから。いつの間に仲良くなったの?」
悟はぐいぐいと花畑君に質問していく。雪見が花畑君に一目惚れは……ない。花畑君と一緒に響鬼先輩のところに行った時が初対面でしょ? あの時は警戒してたぐらいだから。
「仲良く? 俺は嫌われたと思っていたぐらいで、理由はさっぱり分からない」
そんなわけないでしょ。嫌ってる相手にわざわざ挨拶なんてしないんだから。
「……陣子と花畑君って、似たところがあるよね」
「そう?」
「そうか?」
こんな状況で言う事!? 私と花畑君の似たところ……って何? 紗季に上手く使われてる……というのはなしだからね。
「気付かないのは仕方ないと思うよ。で、花畑君が雪見に嫌われたと思ったのは何があったからなの?」
「何が……それは言えない。あの後輩もそう思ってるはずだぞ。無理矢理聞いてやるなよ」
花畑君は悟の返答を切り上げ、校舎の中へと入っていく。『それは言えない』というのは、花畑君と雪見、二人の秘密って感じがする。『無理矢理聞いてやるなよ』って言葉も、優しいを感じ取れるし……
「陣子、【ライソ】のグループにコメントが入ってる。雪見が相談事があるって……まさか」