恋物語は突然に
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「ゴメンね。昨日は戻れなくて」
「全然大丈夫。あの時、悟の機転が無かったら危なかったし、門限もあるんだから仕方ないって」
月曜日。学校の校門前で悟と鉢合わせになった。
昨日、私と紗季が【兄貴】を出た後、悟は紗季の家に戻って来なかった。ライソで連絡があって、【愚弟】の店長と一緒に蛍の手伝いをする事になったらしい。それに加えて、悟の親は厳しく、門限があるから仕方がないでしょ。
「紗季も怒ってなかったから。蛍の手伝いを断るのも難しいと思う」
蛍というより、【愚弟】の店長が悟に頼んだのかも。蛍は一人で作るつもりだったと思うし、それでも許可が出たのは、悟の事を気に入ってるのかもしれない。
「良かった……紗季の漫画の締切はいつまでなの? 私達もおまけ漫画を考えないといけないし」
「締切は月末……ゴールデンウィークが入るから、早めになるみたい。おまけ漫画に関しては最初の単行本だし、私達の紹介と、現場のやり取りで妥協しようかな……って。紗季にも渋々だったけど」
時間が足りないのもあるし、紗季や悟のキャラだけで十分漫画になる。二巻目の発売が決定してからが本番というわけで……
「そうなんだ……なら、会話のネタとかは考えた方がいいのかな? そこでギャグを入れたり……あっ!! あそこにいるのは雪見じゃない? お笑いの勉強になるかもだし、一回聞いてみる?」
私達の少し先に雪見がいた。身長や髪型もそうだけど、少しオドオドした感じがそれだ。
「どうなんだろ? 紗季の漫画のネタを考えるなんて、恐れ多いと思うかもしれない。そういえば、雪見は土日に姿見先輩とバイトしてたんだよね?」
「特訓だね。その話も聞いてみたいし……お~い!! 雪見」
雪見は悟の声にビクッとして、恐る恐る私達の方へ顔を向けた。すると、ビックリするような雪見の眩しい笑顔が……そして、こっちに向かってくる。
「えっ、姿見先輩は何をしたわけ? 紗季相手にもあんな顔を見せた事ないと思うんだけど!!」
「特訓の成果があったんだね。いきなり、ギャグを言ってくるかもしれないよ」
校門過ぎで挨拶のギャグをするメンタルの強さまで辿り着いてたら、姿見先輩は余程の事をしたんだと怖くなるんだけど……
「先輩!!」
「おはよう、雪……」
雪見は私達を通り過ぎて、更に後ろへと走っていくんだけど!! 私達の姿が目に入ってない? 紗季が相手なら師匠と呼ぶはずだし……
「後ろにいるのは一体誰なの……よ」
後ろへ振り返ってみると、雪見が挨拶してるのは花畑君!? しかも、挨拶した後、雪見は顔を赤らめて、すぐに走り去っていったんだけど!!
「……あれだよね。恋する乙女的なやつだよね!!」
悟はそれを見て、何か嬉しそうなんだけど……恋バナとか好きな感じ? これは紗季に知られるのも時間の問題ね。雪見……いや、花畑君が可哀想かも……