エージェント◯◯
「出版社にも!! 【四葉】出版にもエージェントが隠れてるかもしれないのか!? もしかして、黒さんが……」
「エージェントって格好良い呼び方してるけど、黒さんは流石にないでしょ。確かにマイナーな出版社の方がいそうな感じはするけど」
「地味に酷い事を言ってるぞ。それで……そこの所はどうなんだ? いや……自分で見つけた方が面白いか?」
その場合、紗季が出版社にヤバイ奴と思われる……今もそう思われてるかもしれないか? 紗季は日常系の【学遊日誌】を描いてるとはいえ、キャラ的にはスカウトされてもおかしくないと思うけど、そこは好みに入るのか……
「紗季のところの出版社は……いたんじゃないか? 笹川だったような、獅子川だったような名前だった気がする」
「本当にいるの!? 黒さんにそれとなく聞いてみないと……スカウトしてもらったら、異世界研究所に自由に入れるかもしれないし」
「俺も一応スカウトの役割を持っているが……止めておく。そこまで簡単に研究所に入れるわけじゃない。迷惑をかけそうだしな」
兄店長からのスカウトは失敗。研究所に迷惑をかけるなんて、ここに来る前にしてしまってるんだから、スカウトは完全にアウトでしょ。
「店長は駄目でも、出版にいるエージェントが認めてくれたら問題ないでしょ。エージェントである事を皆にバラすとか脅せば……」
「それは逆にエージェントが異世界研究所からクビを言い渡されそうなんだけど……あれ? もしかして、笹川や獅子川じゃなく、酢男……煤川なんじゃ?」
「煤川……って、誰だ?」
「黒さんの代わりに担当になるはずだった……」
「ああ……変質者扱いされた奴か」
「そうだ!! そんな名前だ。変質者扱い……ヤバい奴じゃないか? っと、ラーメンが出来上がったぞ」
煤川、酢男は紗季に会うために学校に侵入して、白先生に捕まった男。遊園地の件で小鳥遊先生に協力したのも、実は異世界研究所繋がりだったのかも。
「多分、紗季は嫌われただろうから、スカウトされる事はないんじゃないの?」
「あれは……アイツの自業自得だろ? 私は気にいったところもあったからな」
私と紗季は兄店長からカップラーメンを受け取り、それを食べながら話した。勿論、椅子もないから立ち食いだ。
「……本当に戻るんだな。目にも止まらぬ早さだ」
兄店長はこちらを少し見ただけで、作業を再開し始めた。
【変身】はちゃんと解除されたらしい。最近だと、【変身】が解けた時でも構わず行動出来るようになってきた。