はじまりはコミケのサークル
「カップラーメン? 常備してるが……それで【変身】が解除されるのか?」
「ですね。流石に蛍が戻ってくる事はないと思うんだけど、念のために。というより、異世界研究所の話を聞く気力が無くなったかも。紗季の漫画の手伝いだって……」
悟には悪いけど、異世界研究所の話を聞くよりも、ここから脱出したい気持ちになってきた。それ以上に、スルメを食べながら部屋でくつろぎたい。なんてたって、今日は日曜日なんだから!!
「それは流石に困るぞ。さっきのやり取りは心臓に悪かったけど……今日のところは止めておくか。勿論、異世界研究所の話を聞く方で、漫画の方じゃないからな」
「俺も紗季達の事情を知らなかったからな……申し訳ない。話はいつ聞きに来てくれても構わない。事前に連絡をくれたら、関係者の一人……今回の流星群以前の能力者を一人紹介しよう」
「乙女座流星群以前の能力者!? いや、いてもおかしくないのか?」
ゴブリンや聖剣と異世界に関係するものもあるけど、乙女座流星群は大勢の能力者を生み出しただけで、それ以前に一人、二人と能力者は出ていたのかも。異世界研究所の創始者も『最初は一筋の流星だった』と言ってたみたいだし。
「その能力者達も全員が女性なわけだが……その前に湯を沸かそう。カップラーメンを食べてる間ぐらいの話はしておこうか」
「陣子だけじゃなく、私の分のカップラーメンも欲しい」
紗季は図々しく、能力関係なしにカップラーメンを兄店長に要求してきた。私も【変身】】を解除するためにとはいえ、人の事は言えないんだけど……
「……仕方ない。今回だけだぞ。作ってくるから、そこで待ってろ」
兄店長は店の更に奥に行き、カップラーメンの準備に向かったみたい。
「紗季達は何処まで知っているんだ? 誰が担当なのかは分かるだろ」
準備をしながらも、話を進めていくつもりみたいだから、ここは答えていこう。
「担当は小鳥遊先生です。知ってるのはゴブリンや聖剣の存在、異世界転移、転生を試す人達がいるとか……後は、創始者が行方不明で、十七年前が始まりっていう話ぐらい?」
「小鳥遊……聞き覚えがあるだけで、接点がないな。研究者なんだろ? なら、別の方面からの話をするか」
異世界研究所でも所属みたいなのがあるわけ? 転移、転生に挑戦する人達と、研究者が同じなわけがないか。
「異世界研究所の母体を作ったのはコミケのとあるサークルだ。そのサークルに協力したのが創始者だな。異世界研究所にいるメンバーの中には、コミケ内でスカウトされた奴もいる。それは俺や弟も含まれている」
「コミケのサークルが母体なの!! 全然誘われた事がないんだけど」
紗季はデビュー前、コミケに何度か参加した事があるんだけど、そこで声は掛けられなかったらしい。紗季の場合、日常漫画系だったから。だったら、サクラ先生は声を掛けられそうなんだけど……
「それはスカウトの好みもあるからな。いくつかの出版社には異世界研究所の関係者が潜り込む……仕事をしてる奴もいるが」